ドコモの広報は「期間と投資額を発表したもので、現在のところ具体的にどのサービス、どの領域に参入して行くか具体的な方針は出ていません」と前置きしながらも「すでに提携を発表しているAstar Networkとアクセンチュアと協力のもと、新会社の設立、M&A、クリエイターの育成などに投資、共通機能基盤となる“Web3 Enabler”を提供し、特にセキュリティや法令遵守の懸念を払拭していきたいと考えています」との回答だった。
これで少しドコモのターゲットがわかったような気がした。
ドコモは10月に日本発のパブリック・ブロックチェーンを開発するAstar Networkと提携済み。これを今後、サービスを構築するWeb3.0の中心に据え、既存のブロックチェーンとの流通を図り、さらに3.0の実績を海外でも構築しつつあるアクセンチュアのノウハウを注入し、新時代のプラットフォーム構築に挑戦しようとしているのだ。「日本発のグローバルデファクトを目指す」という言葉には、その決意が内在している。
Web3.0の「土管屋」に? 一般ユーザーが安心できるサービスを
通信事業会社は自分たちを「土管屋」と揶揄することが多い。土管の敷設同様、社会インフラを張り巡らせるのが、もともとの役割。情報を流通させる通信という“土管”に、ある意味では自負を持っているからでもある。同社の今回の発表は、Web3.0時代の土管を敷設すると宣言しているのだ。
Web3.0には、分散化、透明性、所有権、安全性などの特長があり、ブロックチェーン・ウォレット、暗号資産交換、NFT発行などなどのサービスが構築されている。だが、まだ一般ユーザーへの普及に至ったとは言いにくく、いまだ投資、投棄目的の対象に過ぎない。
11月11日には、アメリカ仮想通貨交換業FTXトレーディングが連邦破産法第11条適応を申請し、経営破綻した。国が発行しない仮想通貨の流通による、新たな金融システム構築を目指したものの、仮想通貨が抱えてきた懸念点が現実のものとなっている。
FTXはMLBなどのスポンサーともなり、さらに大谷翔平や大坂なおみなどと大型契約を締結し、日本でも4月にFTXジャパンをスタートさせたばかりだった。こうした事例が散見されるようでは、一般的なユーザーはWeb3.0の領域にはなかなか踏み込めない。
ソフトバンクは、すでにスポーツ領域などでNFTの発行を重ね、LINE NFTを活用し、その流通を図ろうとしている。それでもすべてのスポーツ好きがNFTを保有するような時代までまだ時間を要すると見ている。
こうしたWeb3.0の流れの中で、ドコモは一般ユーザーも安心して利用できるサービスのプラットフォームを構築する事業に打って出る。
新会社の設立は、2023年。これによりほぼ無策で過ごして来たWeb2.0時代の汚名を返上し、一気にWeb3.0時代の覇者に躍り出ようとしているのではないか。これはドコモによる伸るか反るかの大勝負なのか。その動向は、今後も探って行きたい。