高級ブランドは、若く、特権階級に属するわけではない「向上心のある」消費者にアピールしようと、人気のストリートカルチャーを取り入れてきた。だが、そうしたサブカルチャーが持つ「体制をあざける」価値観は、「体制を維持する」高級ブランドの価値観とは、明らかに対照的だ。価値観の衝突は避けられない。
バレンシアガの現在のクリエイティブ・ディレクター、デムナ・ヴァザリアは2015年、アレキサンダー・ワンの後任として就任。その手腕を評価されている。ブルームバーグは2021年、ヴァザリアは親会社ケリングの売上高をおよそ23億ドル(約3180億円)に増やすことに貢献したと伝えた。
デムナ・ヴァザリア(Getty Images)
同じケリング傘下のグッチの売上高に比べれば少ない額だが、これら2つのブランドはいずれも、ファッションの文化を変え、他者が追随するトレンドを作り出すため、限界に挑む進歩的なリーダーとなっている。
確立した文化やファッションを“つつく”ことは、ヴァザリアが率いるバレンシアガの基本理念だ。彼はヴォーグ誌のインタビューで以前、「ファッションは(誰かを)喜ばせるべきではない」と語っている。
「最も重要な資質は、恐怖心を持たないことだ。恐怖心は創造力を妨げる。喜ばせようとするなら、決して成功しない。喜ばせてはいけない」
皮肉なことに、ヴァザリアは高級ブランドのファッションについて“サディスティックに”支配力を行使しようとすることで、これを実現した。ただ、残念ながら彼は、子どもたちを巻き込んだことによって、超えるべきではない一線を越えてしまった。
(forbes.com 原文)
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