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2022.11.29

バレンシアガの「謝罪」が反映する現代の高級ブランド特有のリスク

Getty Images

高級ブランドは細心の注意を払ってそのイメージを築き、守っている。徹底的にチェックしたもの以外、外部に公表されることはない。内部の誰も、その発信するものが間接的に伝えるメッセージを理解していなかったということなど、ありえない──だが、バレンシアガにとっての問題は、この点にあった。彼らは、超えるべきではない文化の境界を越えてしまった。

反ユダヤ主義的な発言が問題になったイェ(Ye)ことカニエ・ウェストとの関係を断ったことで注目を集めたばかりのバレンシアガが、再び論争に巻き込まれている。

ホリデーシーズン向けに開始した広告キャンペーンに、SMをイメージさせるボンデージギアを身につけたテディベアのぬいぐるみバッグを手に持ち、ポーズを取る子どもの写真を使用したことが、悪評を買ったのだ。

子どもを過度に「性的に扱っている」と批判されたことを受け、バレンシアガは次のように謝罪。この広告を取り下げた。

「当社のホリデーキャンペーンに不快感を持たれた方々に、心からお詫びいたします。このテディベアバッグと子どもたちを、このキャンペーンに同時に起用すべきではありませんでした。当社のすべてのプラットフォームから、この写真を直ちに削除いたしました」

だが、その直後にあるツイッターユーザーが、このキャンペーン広告に写る「アワーグラス バッグ」が置かれたテーブルの上の書類が、「児童ポルノ関連の裁判で米連邦最高裁が2008年に下した判決の内容」を記したものであることを指摘。同社は再び謝罪することとなった。

バレンシアガはその後、この広告の制作責任者に対する訴訟を起こしている。同社の対応について、意見はさまざまだろう。だが、このテディベアの広告が不適切、かつ悪趣味だったということには、誰もが同意するだろう。

成長のために冒す「危険」


文化の構成概念でもある高級ブランドは、社会の階層構造の維持につながっている。だが、さらなる成長を目指す彼らはいま、均質的な従来のターゲット市場から新しい文化、新たな顧客層を含む市場へと、標的を拡大しようとしている。根本的な価値観が真っ向から対立する可能性もある未知の領域に、踏み込み始めたということだ。
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編集=木内涼子

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