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2022.11.30 08:20

宿泊業界なのにコロナ禍でも右肩上がり 宿泊施設向け予約システム「tripla」が上場

triplaCEOの高橋和久

IPO(新規株式公開)を果たした起業家たちは、どのようなターニングポイントを経て、事業を成長させてきたのか。本連載では、上場を手繰り寄せた「飛躍」の出来事と起業家たちの意思決定のプロセスに迫る。

今回話を聞いたのは、2022年11月25日に東証グロース市場に上場した「tripla」のCEO、高橋和久。

同社は、宿泊施設のウェブサイトから直接宿泊予約ができるシステム「tripla Book」と、AIと有人オペレーターが多言語で対応する「tripla Bot」、宿泊業界特化型CRMツールの「tripla Connect」、QRコード決済の「tripla Pay」などのサービスを提供している。

上場初値は1620円で、終値ベースの時価総額は83.9億円となった。今年3月に発表した通期決算では、2021年10月期の売上高は5億600万円、純利益はマイナス1億2800万円となっていたが、コロナ禍でも導入施設数は右肩上がりとなっている。

外資系企業での経験をもとに、マーケットインで勝ち筋を考えながら事業を展開してきた高橋。創業から3年の間に2度のピボットを実施し、2019年に現在のサービスに至った。

IPOまでのターニングポイントを、以下3つのフェーズ別に振り返る。

1. 創業まで
2. 創業3年目まで
3. IPOまで


ターニングポイント1 インバウンドに狙いを定め起業


高橋の実家は、栃木県宇都宮市の発泡樹脂向けの金型メーカー工場。北海道大学・同大学院の卒業後は実家で働いていたが、事業は弟が継ぐことになり、自身はアメリカに留学。2004年にWake Forest大学でMBAを取得後に帰国し、A.T. カーニーフィリップモリス、アマゾンジャパン、日本コカ・コーラと多様な業界を渡り歩いてきた。

「A.T. カーニーでは自動車関連、フィリップモリスではマーケティングとセールスを担当し、アマゾンではファッション事業部の立ち上げ、コカ・コーラではEC部長としてEC部門の立ち上げを経験しました。様々な経験を積んだことが起業への下地になっています」

独立したのも、転職を念頭に動き出したことがきっかけだった。

アマゾンからコカ・コーラに転職する際に、同僚の鳥生格(現tripla CTO)がかつてコカ・コーラに勤めていたことを思い出し、食事に誘って同社のことを聞いてみた。すると、鳥生は焼肉をつつきながら、思わぬことを口にした。
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文=小谷紘友 取材・編集=田中友梨 撮影=小田光二

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