ビジネス

2022.12.07 08:30

スタンフォード大コーチが見た「米国的個人」と自死を防ぐプッシュ型ケア


「メンタルケアのアプローチを変えるべきだ」


話は転じて、今年の春に芸能界での自殺が相次いで起こった時、懇意にして頂いている大手芸能事務所の社長に真っ先に連絡を入れた。「芸能界は、そして○○さんの事務所は、これを機に演者たちへのメンタルケアのアプローチを変えるべきです」

我々のチームには常にスポーツ心理学の専門家が帯同している事、脳震盪の扱いを中心とした命や将来に対する感覚の違い、それらの話を引用した上で今はお世辞にも積極的とは言えないメンタルケアをプッシュ型に変えていく、すなわち、選手や社員からの相談がなくても、管理? している側から声かけをしたり、チェックを入れていくケアの仕組みに移行していくことを進言させて頂いた。

今考えれば釈迦に説法だったのかもしれないが、社長は身を乗り出して私の話に耳を傾けてくれた。別人格を創り出して仕事をするケースが多い芸能界は、その種の見えないリスクが高いのではないかと(勝手に)考察している。その後、同じようなケースが続いていないのを見ると、業界もそこに気づいてきたのでは?とポジティブに考えている。

You’re more than …


このような時代、大きな企業に常駐の心理カウンセラーがいても、あまり驚かない。しかし、大企業で働いているのは、国民の20%ともそれ以下とも言われている。また、「若者の命や将来を慮る」が命題であるとすれば、学校にもその機能は必要だろう。しかし、高校や大学のその手の機能がプッシュ型の手法もとるにも限界があるだろう。

ではどうするべきか? 子供染みた解決策かもしれないが、この記事を読んでもらった皆様が、「メンタルケアをプッシュ型に変えていく」という考え方やアプローチがあるという事を、周りに広げてもらえないだろうか。考え過ぎ、オーバーリアクション、うざい、そんな言葉、甘んじて受けようではないか。それで、人の命や将来が救えるなら。

落ち込んでいる、精神的に弱っている、そんな同級生、仲間、同僚や部下がいたら、一言声をかけてあげて欲しい。ケースやシチュエーションによって、対比するもの(〇〇〇〇の部分)が、会社なのか、プロジェクトなのか、学校のテスト結果や部活の成績なのかは異なるだろうが、語り掛けて欲しい。

「You’re more than 〇〇〇〇.」

「あなたの人生や将来以上に大事なことは、この世に存在しない」を意味する言葉を。

文=河田剛 編集=石井節子

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