六つ目は、台湾のガラスメーカー「春池ガラス」が立ち上げた、回収ガラスを対象とするクリエイターコラボプロジェクト「W Glass Project」だ。春池ガラスは台湾最大規模のガラス回収工場を保有しており、年間の回収量は10万トン、台湾の回収総量の7割を占める。
今回の作品は、Hsiang Han Designとのコラボレーション作品で、結晶クラスターの成長過程からインスピレーションを受けたもの。回収ガラスを素材として活用し、吹きガラスの型を使用して結晶の形状を作り出している。
クリエイター:W Glass Project x Hsiang Han Design / 作品:CRYSTN。 photo by 台湾デザイン研究院 / photo credit:Daisaku OOZU
そして最後の作品は、ハニカム構造で作られた紙の家具だ。両サイドの板を引っ張ることで長さを変えることができるようになっている。紙でありながら高い強度を持ち、使用シーンに応じて異なる雰囲気と、機能性の家具に変形でき、不使用時には小さく畳めるという。
クリエイター:The Young Square / 作品:Honeycomb Paper Sofa。 photo by 台湾デザイン研究院 / photo credit:Daisaku OOZU
いかがだろうか。いずれの作品も素材の質感や特性がデザインよって上手に引き出されており、素材の循環が生み出す新たな可能性を提示している。
資源が少ないからこそ、循環とデザインの力が必要
今回のDESIGNART TOKYO 2022で展示された作品は、台湾で取り組まれているサーキュラーデザイン実践のごく一部に過ぎない。なぜ、台湾ではここまでサーキュラーデザインの実装が進んでいるのだろうか? 張氏はこう話す。
張氏「台湾は小さく、資源も限られています。だからこそ、私たちは素早く動く必要があり、異なる立場の人々が共に協力する必要があるのです。これまで、台湾は廃棄物のリサイクルにおいてはとても優れていましたが、それでは不十分です。私たちにはリサイクルだけではなく価値を向上させるアップサイクリングが必要であり、TDRIはその推進力としてデザインの力を使っているのです。」
面積も小さく資源も限られている台湾だからこそ、経済と安全保障双方の観点から考えても循環経済への移行は喫緊のテーマであり、またそのソリューションとして資源よりも人々の創造性が付加価値となる「デザイン」というソフトパワーに着目しているということだ。