経済・社会

2022.12.05 12:30

デザインが、台湾の未来を変える 注目の「台湾サーキュラーデザイン」のいま

財団法人台湾デザイン研究院の張基義 院長 photo by Nagisa Mizuno


デザインが、台湾の未来を変える


張氏が院長を務める台湾デザイン研究院(TDRI)は、2020年に設立された台湾の政府系デザイン振興機構だ。前身は2004年に台湾の経済部によって設立された台湾デザインセンター(TDC)で、過去20年近くにわたり台湾のデザイン振興を牽引してきた。なぜ、いま台湾は「デザイン」を政策として積極的に推進しているのだろうか。
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張氏「台湾の経済はこれまで製造業やハイテク産業が中心でしたが、これからはデザインが経済を牽引する大きな役割を担うと考えられており、私たちはこれを『ソフトパワー』と呼んでいます。台湾政府はデザインこそが次の潮流であり、台湾を変える力になると考えているのです。私たちの使命は、デザインの力で台湾そのもの、そして世界の台湾に対する見方を変えることです」


DESIGNART TOKYO 2022・社会を循環させる台湾のデザイン「the SP!RAL」の様子。photo by 台湾デザイン研究院 / photo credit:Daisaku OOZU

「これまでの3年間で、TDRIは3つの方向性に力を入れてきました。一つは公共のデザイン、二つ目は産業のデザイン、そして三つ目は社会のデザインです。そして、サステナビリティはデザインだけではなく安全保障の観点からも最重要テーマとなっています」
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「そこで、私たちは過去6年間で3度にわたりサーキュラーデザイン展を開催してきたのですが、3度目のタイトルが “the SP!RAL(スパイラル) “でした。そこでは日本、ドイツ、デンマーク、タイの機関の連携のもとで30以上の台湾企業も集まり、非常に多くのデザイナーがサーキュラーデザインの作品展示を行いました。

今回は、その中から7作品を選定し、DESIGNART TOKYOにおいて展示しました。サーキュラーデザインは我々の世代にとってとても重要な課題になると考えており、招待してくださったDESIGNART TOKYOには大変感謝しています」

今回のDESIGNART TOKYO 2022では、「社会を循環させる台湾のデザイン」というテーマのもと、ガラスや紙、竹、繊維、プラスチック、産業廃棄物など様々な素材が活用された台湾のサーキュラーデザインブランドが披露された。いずれも日々の暮らしに実装可能で、台湾のサーキュラーデザイン実践のいまが分かるものとなっている。ここでは、7作品すべてを簡単にご紹介したい。

一つ目は、miniwizというユニークなクリエイター集団が開発した、スピーカーにもなる花器だ。廃棄物リサイクルシステム「TRASHPRESSO」を利用し、生活によく見かける各種廃棄物を材料として作られている。


クリエイター:miniwiz / 作品:Upcycling Multi-functional Container。 photo by 台湾デザイン研究院 / photo credit:Daisaku OOZU

二つ目は、台湾の電力会社「台湾電力」の社内ベンチャー「TPCreative」が電気設備の廃棄物を用いて作った作品。町中にある緑の変電箱の板を型抜きして作った鍋敷、そして火力発電所の灰という廃棄物で作ったコースター、ダムの浚渫泥で作ったコースターなどが展示された。公的機関の電力会社がこうした取り組みを行うのは世界的に見ても珍しいという。


クリエイター:TPCreative / 作品:電力設備廃棄物から生まれるサステナブルなグッズ。 photo by 台湾デザイン研究院 / photo credit:Daisaku OOZU

三つ目は台湾の工業デザイナーが竹細工に魅了されて立ち上げたブランド「Essence Design & Craft」で、台湾や東南アジアの伝統的な竹細工の技術が現代の生活スタイルに合わせてアレンジされている。


クリエイター:Essence Design & Craft / 作品:竹が織りなす暮らしのフォルム。 photo by 台湾デザイン研究院 / photo credit:Daisaku OOZU

四つ目は、大手スマホメーカーのデザイナーが立ち上げたアイウェアのブランド「Hibāng」。廃棄漁網をアップサイクルし、世界初となる100%回収再生可能アイウェアを開発販売している。


クリエイター:Duolog Design LLC / 作品:Hibāng RE-fishing-Net Circular Eyewear。 photo by 台湾デザイン研究院 / photo credit:Daisaku OOZU

五つ目は、手漉き和紙や書物保存用などの特殊な紙を作っている紙のメーカーが立ち上げたブランド「FENKO CATALYSIS CHAMBER」。今回は100%紙でできた糸を使用して作られた服が出展された。


クリエイター:FENKO CATALYSIS CHAMBER / 作品:The Paper Coat。 photo by 台湾デザイン研究院 / photo credit:Daisaku OOZU
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聞き手=水野渚 文=加藤佑

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