経済・社会

2022.12.05 12:30

デザインが、台湾の未来を変える 注目の「台湾サーキュラーデザイン」のいま

田中友梨
7557

財団法人台湾デザイン研究院の張基義 院長 photo by Nagisa Mizuno

世界の中でサーキュラーエコノミー(以下、循環経済)の先進地域はどこかと聞かれれば、多くの人がオランダやフランス、英国や北欧などの欧州諸国を思い浮かべるのではないだろうか。

しかし、実際にはこの問いに答えるのは意外と難しい。「循環経済」の定義にもよるものの、例えば中国は2008年に「中華人民共和国循環経済促進法」を制定しており、この法律が世界初となる循環経済の法制化事例と紹介されることもある。

また、近年ではインド、ベトナム、インドネシアなど多くのアジア諸国で循環経済への移行に向けた動きが進んでおり、ユニークなサーキュラーデザインの事例も増えてきている。

さらに、近代の発展を支えてきた西洋的アプローチの限界を感じるデザイナーや研究者らが、グローバル・サウスと呼ばれる中南米やアフリカ諸国などの暮らしや先住民の叡智、アジアの東洋思想などに次の循環・再生型社会のヒントを得ようとする動きも出てきている。

世界各地で同時多発的にローカルに根付く実践が広がっている現在では、一概に欧州の動きが進んでいると考えるよりも、より多元的な見方で各地の実践を捉えていくほうがよいだろう。

その中でも特に近年注目を浴びているのが、台湾の取り組みだ。もともと資源が限られている台湾では、1988年に廃棄物清理法が改正され、90年代にかけて徐々にリサイクルの取り組みが前進。2002年には天然資源の保全や廃棄物削減、リユース・リサイクルの促進などを目的とする「資源回収再利用法」が制定され、資源循環に向けた基盤が整備されていった。


台北市内のゴミ箱 – via Shutterstock

このような土台があったおかげで、ひとたび台湾に「循環経済」の概念が導入されると、この新しい考え方は急速に受け入れられていく。

2011年以降、The CTCI Foundation(中技社、前China Technological Consultant Inc.)が循環経済に関する一連の出版物を発行し、概念の普及に貢献している。また、2015年には Circular Taiwan Network(循環台湾基金会)が設立され、2016年5月には蔡英文首相が就任演説において循環経済への移行を宣言。

5つの産業に「循環経済」と「新農業」という2つの移行戦略を合わせた「5+2 産業イノベーション計画」を公表した。そして2019年には台湾の経済部が「Taiwan Circular Economy 100(TCE100)」を設立するなど、官民一体となった取り組みが進められている。

いま、台湾では循環経済やサーキュラーデザインはどのように実践されているのだろうか?日本は、台湾の実践から何を学ぶことができるだろうか。今回 IDEAS FOR GOOD編集部では、10月21日~30日にかけて開催されていたDESIGNART TOKYO 2022内の展示企画、「社会を循環させる台湾のデザイン『the SP!RAL』」のために来日していた財団法人台湾デザイン研究院(以下、TDRI)の院長・張基義氏に話を聞く機会を得た。
次ページ > デザインが、台湾の未来を変える

聞き手=水野渚 文=加藤佑

ForbesBrandVoice

人気記事