経済・社会

2022.11.28 09:00

観艦式で首相が乗艦した「日本版空母」いずもは時代遅れなのか

縄田 陽介

観艦式には、受閲艦艇部隊の一員として、海上自衛隊が21年3月に命名・進水式を行った新型護衛艦「FFM」1番艦「もがみ」も参加した。他の海自艦の概観と異なり、のっぺりした船体に、一角獣のようなユニコーンと呼ばれる複合型アンテナがついている。レーダーに映りにくいステルス性能を追及した船体だ。「もがみ」は、米軍のDMO構想における小型艦にあたる。今は、「もがみ」と2番艦の「くまの」が就役しただけだが、将来的には、海自が保有を許された護衛艦54隻中、22隻がFFMになるという。

ただ、モダンな概観ではあるものの、最先端の能力を有していると言えるかどうかは怪しい。「船体のコンパクト化」「省人化」を掲げており、約729億円かかった直近の「あさひ」型護衛艦よりも、約250億円安い調達価格に抑えているが、ネットワーク機能、長距離攻撃能力等については、DMO構想として運用するのに十分なのだろうか。これに対し、コンステレーション級の価格は「あさひ」型よりも高い約900億円。対艦ミサイルも、日米の戦闘艦艇が標準装備している8発の2倍にあたる16発を搭載する予定だ。

一方、「いずも」は米国と同じようなDMO構想の中で、どのように活用できるのだろうか。無用の長物と化してしまうのか。渡邊氏は「それでも、いずもは有用でしょう」と語る。「いずもは導入が決まっているF35Bステルス戦闘機を使った空母的な運用によって、様々な洋上防空作戦ができます。地対空誘導弾パトリオット(PAC)3や大型トラックを積んでの展開にも使えます。2016年の熊本地震では、災害派遣車両を運んで活躍しました。邦人保護などの輸送や、南西諸島における国民保護のための輸送などにも使えます」。

渡邊氏は「いずもは多機能艦です。空母機能はその一つにすぎません」と語った。

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文=牧野愛博

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