現在63歳のレイは、企業再生のプロとして知られ、米国史上7番目に大きな倒産となったエネルギー会社のエンロンの破綻処理の陣頭指揮をとり、他にもサブプライムローン発行会社のレジデンシャル・キャピタルや、通信会社のノーテル・ネットワークスなどの案件を手がけてきた。
彼は、かつては320億ドル(約4.4兆円)の評価額を誇ったFTXの破綻騒動の嵐の中心に飛び込むことになった。関係者の間で「SBF」のニックネームで呼ばれるFTX創業者のサム・バンクマンフリード(30)が、「とんでもない失敗をやらかした」とツイートし、突然の辞任を発表した後の11日に、レイは同社の新CEOに任命された。
レイの仕事は、FTXの破綻の詳細を解き明かし、盗まれた暗号通貨を含む行方不明の資産を探し出し、事業の再編成や売却を通じてステークホルダーの価値を最大化することだ。FTXは先日、事業の売却や再編成の準備のために投資銀行ペレラ・ワインバーグ・パートナーズを起用したと発表した。
レイはこの仕事を引き受けて以来、午前9時半と午後6時の1日2回、週7日体制で弁護士や会計士とミーティングを行っている。再建顧問会社アルバレス&マルサルの申告書によると、レイはこの仕事で1時間あたり1300ドル(約18万円)の報酬と必要経費の支払いを受けている。
ハーバード・ロー・スクールで、企業の破産を専門とするジャレッド・エリアス教授は、「彼は、この分野できわめて優秀な専門家の一人だ」と話す。「レイは、最悪の状況に飛び込んで、債権者のために最良の結果を出した実績がある」
腕利きの「掃除屋」
そのような役割を担う人物にふさわしいキャラクターのレイは、インターネット上での足跡をほとんど残していない。彼の唯一のパブリックな写真は、15年前にシカゴ・トリビューン紙に掲載された一枚のみだ。ツイッター上でFTXの破滅を記録しているAutism Capitalは、冗談交じりにこう指摘している。「ジョン・レイは、映画『パルプ・フィクション』に登場する殺人現場の“掃除屋”のザ・ウルフの企業版みたいなものだろう。会社の混乱を一掃する彼は誰にも何も話さずに、夕日の中に消えていくのみだ」
FTXの広報チームは、レイがフォーブスの取材に応じることを拒否したが、レイはプロセスの細部に入り込み、特別に編成したチームで迅速に行動することで知られている。FTXの業務で彼は、事業を4つの部門に区分けし、それぞれの部門で輝かしい経歴を持つ独立取締役を任命した。
2007年のシカゴトリビューンによると、レイはマサチューセッツ州で配管工を務める父と専業主婦の母親のもとで育った。マサチューセッツ大学アマースト校を卒業した彼は、1982年にアイオワ州のドレイク大学で法律の学位を取得し、シカゴの法律事務所Mayer Brownでキャリアをスタートさせた。その後、Waste Management社とその関連会社の顧問弁護士として、民事及び刑事訴訟を担当した。
彼が企業破産に関わったのは、1999年に多額の負債を抱えて倒産した下着メーカーのフルーツオブルーム社が最初だった。レイは、最高法律顧問として、連邦破産法第11条の手続きに関する「すべての側面」を管理したとされる。