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2022.12.01

資産規模2兆円 米国で存在感増す「クリエーション型VC」とは

Getty Images

最近、政府や経済団体は、ユニコーン企業を創出しようという議論を頻繁に行っています。しかし、それを目標として掲げるのは本質的ではないかもしれません。

米国在住の起業家シバタナオキ氏は、日米に投資するベンチャーキャピタリスト(VC)に「より投資リターンが得られる国はどちらか」と尋ねると、こう返ってきたと言います。

「アメリカの方がはるかに得られます。アメリカでは、すでに企業価値が高くなっているレイトステージ(上場が視野に入るような段階)でお金を出しても、1株10ドル程度でIPO株式上場をし、そこから50〜70ドルまで株価が上がります。数千億円や数兆円クラスの企業価値になる会社が多数生まれるのです。

ところが日本だと、例えば100億円の企業価値の時に出資すると、上場しても300億円辺りで足踏みし、3倍くらいにしかならない。会社の値段の上がり方が日米で全然違う」

つまり、ユニコーンを創出するにしても、問われるのは「成長ポテンシャル」です。上場やユニコーン到達から、さらに成長することが大切なのですが、現状、日本はそこが総じて弱く、スタートアップの存在感の日米差を大きくしています。

そこで今回は、米国の成長ポテンシャルを支える取り組みとして存在感を増す、「ベンチャークリエーション」について紹介します。

変化する投資スタイル


筆者や友人の多くは、米国の方々から「ライフサイエンスは利益が望めるビジネスなのに、日本での投資規模はなぜこんなに小さいのか?」と驚かれます。

ライフサイエンス分野のVCは、多産多死のスタートアップに選別投資する従来のスタイルから、さまざまな工夫や試みがなされてきました。その一つが「ベンチャークリエーション」です。

10年ほど前から米国で使われ出した言葉ですが、これを日本に紹介しているのが、

・小柳智義博士:京都大学医学部附属病院 先端医療研究開発機構ビジネスディベロップメント部門 特定教授)
・デバン・タコール博士:シリコンバレー本拠のバイオテクノロジー専門家

の2人。

「ベンチャークリエーション」は、VCが自らが製品アイデアを創出から事業計画を立案を担い、ラボでの実験を含めて事業としての評価を行う取り組みです。一つのサイエンスに対して一つの用途を追求するのでなく、科学者を投入し、いくつかの製品や治療法の可能性を探り、有望なものを投資育成するアプローチです。

すでに10以上のベンチャークリエイション型VCが数百億円〜数千億円のファンドをつくって活動しています。

一つの成功事例はフラッグシップ・パイオニアリング社。「ベンチャークリエイション」型VCの中で最もファンド規模が大きく、モデルナなどを生み出してきました。
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文=本荘修二 編集=露原直人

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