テクノロジー

2022.11.26 13:30

『マネー・ボール』から20年、プロスポーツにおけるデータと分析の現在

安井克至

ザック・スコットは、プロスポーツにおけるデータと分析利用の熱烈な支持者だ。スコットはボストン・レッドソックスでコンサルタントを18シーズン務め、その後、野球研究開発担当副社長や執行副社長、副ゼネラルマネージャーなどの要職に就いた。スコットは在任中、ボストン・レッドソックスの4度のワールドシリーズ・チャンピオン獲得に貢献した。さらにスコットは、ニューヨーク・メッツの上級副社長兼ゼネラルマネージャー代理を1シーズン務めた。

現在、スコットは、あらゆるプロスポーツリーグのチームがグラウンド上の成績を改善するためのデータテクノロジー戦略実施を支援している。彼の会社であるFour Rings Sports Solutionsを通じて、スコットはスポーツチームのオーナーや幹部と提携してイノベーションを推進し、成功を維持できるスポーツチーム運営方法を構築している。スコットの専門家としての関心事は野球チームの運営、すなわち選手の獲得、選手育成、ゲーム内戦略などに向いており、チケット販売、集客、ファンの維持その他の責任を受け持つ事業運営側ではない。現在、彼は自身の経験を他のスポーツリーグにも持ち込むべく、NHLと共同作業している。

「野球における過去20年間のデータ・分析の応用は、投資額においても定量的指標の使用においても、著しく成長しています。この間に私たちの扱うデータ・ポイントは、1万件から100億件へと増えました」とスコットは語る。専任データアナリストとソフトウェア開発者の平均人数は、上位チームではフルタイム換算18名に上り、先頭に立つタンパベイ・レイズは39名の専任専門家を擁している、とスコットは指摘する。これは他のスポーツリーグのモデルでもあると彼は考えている。

プロスポーツチームは、最新の生物力学データとビデオ映像を組み合わせることで予測モデルを構築する。プロスポーツチームの間で現在、最も多く収集・使用されているのが、動画、GPS、ウェアラブルデバイス、生物力学装置、モーションキャプチャなどを通じて取り込んだ追跡データで、MLBのバット速度、投球速度などの測定に用いられている。データと分析をスポーツ運営に統合することによって、コーチやスカウトは守備位置の考察などといった上位レベルの活動に専念できるようになる。
次ページ > 投資の結果が見えるまでに1~3年かかる

翻訳=高橋信夫

ForbesBrandVoice

人気記事