世界のデング熱の症例数は新型コロナウイルス感染症が流行している間に下がったようで、英医学誌ランセットの感染症ジャーナル「ザ・ランセット・インフェクシャス・ディジージズ(The Lancet Infectious Diseases)」に今年掲載された論文からは、コロナ禍の行動規制により2020年は約72万件のデング熱の症例が防げたことが示唆されている。
しかし問題は解決からはほど遠い。WHOはこうした年のデータは完全ではなく、新型コロナウイルス感染症の流行により一部の国で報告活動が滞った可能性があると指摘している。
世界のリーダーらが、高まる気候変動の危機への対処に苦慮する中、デング熱を媒介する蚊が新たな地域へと広がる可能性があり、デング熱まん延の問題は新たな重要性を帯びている。
天気の変化やハリケーン「イアン」通過後のフロリダ州で起きたような洪水も、デング熱のまん延を防ぐ上で課題となる。デング熱の他にウエストナイル熱のような病原体の宿主である蚊は、洪水の水や、大きな嵐の後に残されたがれきの間で急速に増殖することができ、災害から立ち直ろうとする人々に対して大きな公衆衛生上の脅威をもたらす。
デング熱を引き起こすウイルスには4つの異なる血清型があり、これらは密接に関わっている。デング熱から回復すれば、その特定の血清型については生涯にわたる免疫が与えられると考えられているが、デング熱に再び感染すると重症化のリスクが高まる。
この問題は最近まで科学者の間で議論を呼んできた。しかし現在では多くの科学者が、感染後に作られ通常は保護の役割を果たす抗体が、再感染の際はデング熱ウイルスを助けることがあると考えている。
デング熱に2度目に感染した場合に重症化のリスクが高まることは、ワクチン開発の取り組みを複雑化してきた。
初めてデング熱のワクチンを開発したのはサノフィパスツールで、ワクチンは米国を含め複数の国で認可されている。血清抗体陰性の人がワクチン接種後に初めてデング熱に感染した場合、重症化のリスクが上がることが判明したことから、このワクチンは既にデング熱の感染が確認された人にのみ投与されることになっている。
他にも評価中のワクチンは複数あり、武田製薬が開発しデング熱の感染歴がない状態で使用できる「キューデンガ(QDENGA)」は前途有望で、8月にインドネシアで承認された。
(forbes.com 原文)