ボストン交響楽団が5年ぶりに来日 オーケストラCEOのビジョン

ボストン交響楽団 CEO ゲイル・サミュエル


コロナ禍を経て


BSOだけでなく、多くのオーケストラで、コロナ禍の間はデジタルのプログラムの割合が大きくなりました。ホールに来られない人たちとどう繋がるか模索する中で、既存の顧客には一定リーチできたと思いますが、やはり新規へのリーチは難しかったですね。

社会がやっと落ち着きを取り戻した今、新しい聴衆のみなさんに対して、どうアプローチしていくかを改めて考え直しているところです。

タングルウッドは屋外の公演が多いこともあって、ありがたいことにコロナ前の水準を取り戻しつつあります。一方、定期会員はもともと低迷気味だったのが、コロナでさらに減少スピードが加速してしまいました。なんとか食い止めなければなりません。

長年BSOの音楽監督を務めた小澤征爾さんのおかげで、BSOは日本と深い縁があります。ヴァイオリンパートには1960年代から在籍する水野郁子さんや、今年新たに参加した田口拓実さんら日本人の団員も何人か活躍しています。

今回のツアーはKDDIがメインスポンサーについていますが、海外オーケストラのツアーを企業がサポートするモデルは日本独自のもので、世界の中でも独特のスタイルです。航空券等の値上がりなど海外公演にかかるコストはあがって大変ですが、第二の故郷だと感じているこの場所に、またすぐに戻ってきたいと思います。



音楽を愛するCEOとして


私のようにオーケストラのマネジメントを仕事をしている人には、およそ何らかのかたちでクラシックのバックグラウンドがあると思います。楽器を弾いていたけれど、演奏者としてはプロフェッショナルにならずに一度どこかに就職をして、みたいな人が多いのではと思います。

私の両親は音楽の先生で、私は自分が音楽を愛していることを自覚していましたが、プロの演奏家になるというキャリアはあまり想像できず、ビジネスのスキルを磨きあげて今のポジションに辿りつきました。

コロナ以降、オーケストラの運営においても、ビジネススキルの重要性がさらに高まっています。音楽や芸術に対する大きな愛がないとできない仕事ですが、BSOを多くの人々に届けるためにチャレンジを重ねていきたいです。

文・写真=山本憲資 通訳=井上裕佳子 撮影協力=サントリーホール

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