久しぶりの来日となった今回、ボストン交響楽団と6回の公演を行った。11月末にはセイジ・オザワ 松本フェスティバルの30周年記念公演でサイトウ・キネン・オーケストラのタクトを振る予定となっているマエストロに話を聞いた。
音楽監督就任から8年
最近、時が経つのがなんて早いんだろう、と常々感じます。普段はあまり意識することはがありませんが、ふと数えてみると、音楽監督に就任してもう8年経ったのかと驚きます。
これまでいろいろな楽団で指揮をしてきて、もちろんそれぞれに良さ、愉しみがありますが、自分にとってボストン交響楽団(BSO)は、尊敬し、愛してやまない家族のような存在です。
彼らとは、リハーサルやコンサートを通じて、様々な音楽の体験を共にしてきているわけですが、まったく退屈することがありません、常に成長をし続けているチームであり、事ある度に新しい色彩感を発見できるパートナーでもあります。
私はライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(ドイツ)でもカペルマイスター(音楽監督)を務めていますが、実は両者にはいくつかの共通点があります。
BSOの本拠地のシンフォニーホールは、古いシューボックスタイプで、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の本拠地であった二代目のゲヴァントハウスをモデルとして設計されています。そのホールは第二次世界大戦で損傷し後に取り壊され、現在の三代目ホールは東ドイツ時代に建てられたものなのですが、そちらも素晴らしいホールです。
ゲヴァントハウスのホールの入り口から楽屋までの廊下には、歴代のカペルマイスターたちの肖像が飾られています。メンデルスゾーンやフルトヴェングラー、ニキシュにブルーノ・ワルター、そしてブロムシュテットまで。この楽団の礎には、素晴らしい先人たちが積み上げてきた歴史があります。
ドイツらしい音楽を語るとき、ベルリン・フィルの名前ももちろん挙がってきますが、歴史という観点でみると、ライプツィヒ・ゲヴァントハウスは275年と世界でも最も古い楽団の一つとして歴史を積み重ね、実にドイツらしい楽団といえると思います。
BSOはアメリカではもっとも古い楽団のひとつですが、多くの国からの影響を受け、フランススタイルも得意としています。1949年にBSOの音楽監督に就任したシャルル・ミンシュは、元々はバイオリニストで偶然にもゲヴァントハウスのオーケストラのコンサートマスターも務めていた人物。指揮のスタイルはフランス色が色濃く、ベルリオーズの『幻想交響曲』やラヴェルの『ダフニスとクロエ』などフランスの名曲を聴きたければボストンに行くべし、なんて言われたものです。
そんなボストンとゲヴァントハウス。同じピースを各楽団で演奏していても、それぞれ別のもので、指揮という体験を通じてそのことを感じられることはとてもエキサイティングですね。