「弱気相場は終わっていない」──。米ゴールドマン・サックスの世界株担当チーフストラテジスト、ピーター・オッペンハイマーは21日の顧客向けリポートでそう指摘し、利上げがピークを迎えるまで「持続的な回復」は始まらないだろうとの見通しを示した。ゴールドマンでは利上げのピークは来年以降になるとみている。
オッペンハイマーは米国株について、依然として米経済をめぐる新たな材料に敏感に反応する状態にあるとし、値動きは今後さらに激しくなると予想。S&P500種株価指数は来年「最後の」安値をつけたあと、年末には4000ポイントに戻して年初とほぼ同水準で終えるとのシナリオを示している。
オッペンハイマーによると、現在の弱気相場は主に景気循環と金利上昇を原因とした循環的なものであり、過去のデータによるとこうした下げ相場は平均2年2カ月〜4年2カ月続き、その間に「何度かの急激な上昇」が起きて回復していくという。
モルガン・スタンレーのリサ・シャレットも21日のリポートで同様の見方を示している。S&P500は今月10%近く急騰しているが、これは「強気相場の始まり」ではなく、インフレに関するデータが予想以上に良好だったことに関連した「新たなベアマーケットラリー(弱気相場のなかでの一時的上昇)」だとし、注意を喚起している。
シャレットは最近の株価上昇について、昨年12月以来の高水準にある投資家の強気心理や、市場に有利な「ねじれ議会」になった中間選挙の結果など、プラスの要因がある点は認めながらも、来年は利上げの影響が明らかになるにつれて経済への懸念が強まっていくだろうと警鐘を鳴らしている。
企業は景気減速を織り込んで業績見通しを下方修正し始めているものの、シャレットは市場が直面する「最も懸念される」問題として、来年の「実現しそうにない収益予想」を挙げている。モルガン・スタンレーは、企業による業績見通しの引き下げはさらに続き、S&P500は来年末には3900ポイントと現在の3950ポイントから1%下がると予想している。
今月発表された10月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比7.7%の上昇と、市場予想を下回る伸びにとどまった。伸びは6月の9.1%をピークに減速してきてもいる。FRBが積極的な利上げにブレーキをかけるタイミングを見計らうなか、消費者にとって明るい兆しとなり、株価も急騰した。ただ、多くの市場関係者はインフレが沈静化したと過度に楽観しないよう注意を促している。
シャレットは「弱気相場の終わりの始まりと終わりそのものを混同してはならない」と述べ、「景気減速や業績下振れを無視した投資はおそらく危険なものになる」と警告している。
(forbes.com 原文)