NPB(日本野球機構)と12球団が11月14日に開いた臨時代表者会議で、23年と24年のシーズンオフに改修を行うことを前提に来季は現状のままでの使用が認められ、一応の決着を見た。
問題の是非についてはともかくとして、この新球場の可能性について、NFL、NBAといったメジャースポーツや、ローリング・ストーンズ、マドンナなど多数アーティストの招聘経験を持ち、伝説のプロモーター「ドクターK」として世界的に著名な北谷賢司氏に訊いた。
北広島市で、来春の開業を目指す「北海道ボールパークFビレッジ」がほぼ完成に近づき、最終的な追い込み工事と周辺の道路舗装などが急ピッチで進んでいる。新球場の施工を請け負っている大林組の手配で、内覧の機会を得ることができた。
米アリーナ・スタジアム設計大手のHKSがデザインし、MLBが全面協力しただけあって、斬新な北米ボールパークのエッセンスを凝縮した完成度の高い施設である。
左右非対称の設計で、部屋の窓がダイヤモンドに面したホテルや、サウナに入りながら試合観戦ができる温浴施設、場内で製造・販売を行うビール醸造所、ダグアウトと同じ目線で大型ガラスを隔てただけのホームベース至近距離から観戦できる特別席などを備えた、天然芝を養生できる開閉式の屋根付き球場が誕生することは注目に値する。
レフトスタンドに位置するランドマーク「TOWER 11」。ホテル・温浴施設などが入る(筆者撮影)
しかし、札幌からは車で約1時間、新千歳空港からも約30分かかり、隣接する駅はJR北海道が資金を調達できれば28年開業予定と、アクセスは極めて悪い。
更に、天然芝を保護するために、大型のステージを必要とするイベントは開催し難く、年間最大で70~80回の野球開催しか期待できない。
場内の看板やデジタル広告の価格は、札幌ドームの最低でも5割増しで設定され、飲食価格も高額になる見込みだが、野球が年70~80試合開催されるだけでは600億円に及ぶ建設費を回収し、利益を出し続けていくことは困難だと思える。開業後2、3年はご祝儀で関連企業からの支援が得られても、その後の経営の安定は厳しいのではないか。
札幌ドームとの使用料や場内看板売上に関する問題などが起因となり、一気に施設建設まで漕ぎ着けたものの、閑古鳥なく巨大施設となる危惧は拭えない。
母体である日本ハムや電通に何らかの秘策があるのか、行く末を見届けたい。
「TOWER 11」に描かれた、ダルビッシュ有選手と大谷翔平選手のウォールアートの前で(写真中央:筆者)
連載:スポーツ・エンタメビジネス「ドクターK」の視点