ワイン1本1本を番号で管理
世界遺産と隣り合わせでワインを造っている生産者には、自然と共存するワイン造りが当然のように根付いている。1998年には「環境と調和したワイン生産(IPW)」というガイドラインを制定し、いまや95%以上がこのガイドラインに則っている。
注目を集めたのが、2010年に世界で初めて自然に配慮したワイン造りの証としてサステナビリティ・シールを導入したこと。南アフリカワインのボトルの首にはほぼ必ずシールが貼られており、シールに記載の番号でワインのブドウ産地やヴィンテージといった生産過程がトレースできる。つまり、品質保証の証でもあるのだ。このようにワイン1本1本を番号で管理しているワイン生産国は、世界広しといえど南アフリカだけだ。
注目は「35年以上」の古木
さらに南アフリカワインといえば、いま最もホットなトピックのひとつが「古木」だ。気候に恵まれた南アフリカでは、樹齢の高い古樹のブドウが多く現存する。この古木は若木に比べて収量は落ちるものの、その凝縮感や旨味、複雑味はピカイチ。とにかく味わいに深みがある。
シュナン・ブランやセミヨンの古木が多く残るが、例えばサンソーやパロミノ、コロンバールといったパッとしないブドウ品種でも、古木となるとたちまち魅力を表すから不思議だ。若木より水を必要とせず、乾燥した地域でも地中深くに這った根が水を吸い上げるため、無灌漑でも栽培が可能なのもサステナブルだ。
1882年植樹の古樹(マスカット・オブ・アレキサンドリア)
では古木って何年から?人間だって「何歳からおじいさん、おばあさんなの?」という疑問がわく。
そこを古木=35年以上と明確に定義をし、古木の管理・保護に努めているのがオールド・ヴァイン・プロジェクト(OVP)という団体だ。もちろんフランスやオーストラリア、スペイン、カリフォルニアなどにも古木は多く現存するが、南アフリカが一歩進んでいるのは、2018年に世界で初めて古木の認証制度を導入したこと。
OVPのメンバーは、樹齢35年以上の畑から造られたワインのボトルに「認定ヘリテージ・ヴィンヤード(Certified Heritage Vineyards)」のシールを貼ることができ、単一畑の場合には植樹年まで表記可能だ。
植樹年によりそのワインのブドウの歴史が一目瞭然に
OVPの目的は、古木から造られたワインの価値を上げること。古木は収量が低く、かつ機械化ができない。価値を認め適正な価格を生産者に払うことが、サステナブルなワイン造りにつながるのだ。
自然と人にやさしい南アフリカワイン 世界のフェアトレードワイン、南ア産は80%以上
そして見本市でも強調されていたのは、「自然環境を守る」という意味だけでなく、「人・社会」に対してもサステナブルであること。例えば、南アフリカはフェアトレードワインの生産が世界一多く、全世界のフェアトレードワインの売り上げの約80%以上が南アフリカ産だ。
逆にいえば、それは今現在フェアでないことの証でもある。ワイン生産国としてポテンシャルを開花させながらアパルトヘイト時代の影が色濃く残る南アフリカワイン業界では、社会貢献への取り組みが非常にさかんだ。