「塩気」「酸がきれい」。南半球最大ワイン見本市で邂逅、南アワインの奇跡

カリスマオーラを放つピーター・アラン・フィンレイソン氏と筆者。「クリスタルム」は入手困難なので、彼が手掛けるもう1つのワイン「ガブリエルスクルーフ」が狙い目


「ナチュール」なのに、馬小屋臭、温泉卵臭なし!


ただし、南アフリカワインの最上の造り手に通じるのが、ナチュラルでありながらとてもクリーンな点だ。よくちまたにある「ナチュール↑(若者は、語尾を上げて発音するらしい)」には、馬小屋臭や温泉卵のにおいなどの「オフフレーバー」があるものも存在する。できるだけ人が手を加えない造りは、自然に委ねる部分が多いだけに、人がコントロールするよりも難しいためだ。だが、南アフリカの生産者は、オフフレーバーを防ぐ高度な醸造技術を備えた上で、「テロワールの表現」に力を注いでいるのだ。


土壌の違いにもフォーカスする生産者たち

「製法」に焦点を当てたブースも


造り手や産地だけでなく、製法に焦点を当てたブースも。「WHOLE BUNCH PIP STOP」コーナーは、「ホール・バンチ(全房)」による醸造を取り入れた生産者たちの集団。なぜレーサーの衣装をまとっていたのかは謎だ。

ワイン造りにおいて、通常ブドウは果梗を取り除いて仕込むことが多いが、果実を房のまま使用するのが、ホール・バンチによる醸造だ。白ワイン造りでは房ごと絞るとデリケートな味わいになるといわれ、赤ワイン造りにおいては房のまま発酵させると、フレッシュな果実香&シルキーな舌触りやスパイシーな風味をプラスする効果がある。

ピノ・ノワールにおなじみの手法だが、南アフリカではシラーやグルナッシュ、サンソーといったローヌ品種にもよく用いられ、この造り手のブースに限らず、南アフリカワインの醸造データを見ると「全房〇%」という表記にたびたび出くわす。



ファン・ロッゲレンベルグのエレガントなカベルネフランや、花やハーブの香りが心地よいサンソー。ローレンス・ファミリーの、1977年植樹のシュナン・ブランのしみ込む旨味。プロの見本市ではワインは吐き出すのがお約束だが、思わず飲み込んでしまう美味しさだ。



「ファン・ロッゲレンベルグ」のルーカス・ファン・ロッゲレンベルグ氏

「ローレンス・ファミリー」のフランコ・ローレンス氏 
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取材・文=水上彩 編集=石井節子

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