「塩気」「酸がきれい」。南半球最大ワイン見本市で邂逅、南アワインの奇跡

カリスマオーラを放つピーター・アラン・フィンレイソン氏と筆者。「クリスタルム」は入手困難なので、彼が手掛けるもう1つのワイン「ガブリエルスクルーフ」が狙い目


カーニバルのようなブース、中でも黒山の人だかりは──


カーニバルのようににぎやかなブースで、ひときわ真面目オーラを発していたのが、ダーマシーンのジャン・スミット氏だ。「モヤ・ミーカー」という女性の顔のラベルのピノ・ノワールが日本で有名だが、古樹から造られた白ワインやシラー、カベルネフランも素晴らしく知的で繊細。「ワインには造り手の個性が現れる」とはよくいうが、まさしく静かに本でも読みながらゆっくりグラスを傾けたいワインだ。


同じシラーでも畑ごとの飲み比べが楽しい


トップ生産者の一人クリス・アルヘイト(左)とアシスタントワインメーカー

そしてZOO CRUコーナーと並んで黒山の人だかりだったのが、スワートランドという産地のブース。2000年代以降、劇的にワインの品質が上がったファッショナブルなワイン産地だ。革命を起こした立役者イーベン・サディを筆頭に、マリヌーやバーデンホースト、テスタロンガやラールといった才能ある造り手が輝いている。とくに古木を含むシュナン・ブランやシラー、グルナッシュといったローヌ品種が素晴らしい。


スワートランドの伝説、イーベン・サディ氏


デイビット&ナディアの透明感あふれるグルナッシュ

マンデラの大統領就任でワインも国際化……


そもそも南アフリカには360年以上と意外にも長いワイン造りの歴史があるにもかかわらず、1990年代までは、文字通り「眠れる獅子」だった。悪名高きアパルトヘイトによりワイン業界は衰退し、「質より量」の時代が長かった。

1994年にネルソン・マンデラ大統領が自由への扉を開けると、ワイン造りも一気に国際化が進んだ。海外で学んだワインメーカーが南アフリカに最新技術を持ち込み、個々の土地にあったワイン造りに重きがおかれるようになった。自らブドウを調達し瓶詰めする小中規模の独立した生産者の数は、25年で2倍以上に増えた。すなわち「量より質」への転換が進み、個も輝ける時代になったのだ。

新世代の南アフリカワインの造り手に共通するのは、“イージー・ゴーイング”な雰囲気。服装もカジュアルで、リラックスした雰囲気をまとっている。面白いことにワインもしかりで、飲んだ時にスーッとひっかかりなく喉を滑り落ちるようなナチュラル感があるのだ。これは、彼らが気候風土(テロワール)をワインに表現することを大切にしているから。そのため、畑には化学合成農薬・化学肥料を使わず、できるだけ人が介入せずに造った「自然派ワイン」も多い。


スワートランドの人気者、アディ・バーデンホースト
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取材・文=水上彩 編集=石井節子

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