「塩気」「酸がきれい」。南半球最大ワイン見本市で邂逅、南アワインの奇跡

カリスマオーラを放つピーター・アラン・フィンレイソン氏と筆者。「クリスタルム」は入手困難なので、彼が手掛けるもう1つのワイン「ガブリエルスクルーフ」が狙い目

いま、南アフリカワインが熱いことをご存じだろうか。とくにSNSには熱烈なファンがおり、南アフリカワインについて呟けば、たちまち拡散されコメントがつく。そこには「南アフリカ」というキーワードでつながった不思議な結束力すら感じるほどだ。南アフリカワインが口の肥えた日本のワイン愛好家を引き付けるわけとは──?「WOSA Japan(南アフリカワイン協会)」のメディアマーケティング担当でもある筆者はそれを探りに、約30時間かけて地球の裏側まで飛んだ。

2000人の目利きが集まる3年に1度のイベント


お目当ては、「ケープワイン」というワインの見本市だ。3年に1度、3日間にわたり南アフリカの首都ケープタウンで開催されるこのイベント。何がすごいかといえば、南アフリカじゅうから400以上のワイナリーが一堂に会し、世界60カ国から2000人弱のワインのプロが目利きにくる。いわば南アフリカワインのお祭りだ。昨年はコロナ禍で延期されたため、4年ぶりとなった会場はひときわ熱気にあふれていた。





商談はメリーゴーランドで?


まず驚いたのが、会場の装飾の派手なこと。ファンシーなメリーゴーランドの中で大人達がマジメに商談している。

志を同じくする生産者たちが集まったコーナーもあり、なかでもひときわ目立っていた集団が「ZOO CRU」──“その土地のワイン”に焦点を当てた生産者たちだ。この後何度となくこのブースを通ることになるが、いつ見ても人だかりで、さながら動物園の様相。生産者たちはなぜか1970年代のパーティー・コスチュームに身を包んでいる。



ちょっぴりおふざけな集団だが、ワインはとにかくセンスが良い。特にZOO CRUの長でもあるダンカン・サヴェージは、飲み手だけでなく造り手も「よぅダンカン! 流行ってるねぇ!」と冷やかしに来るほどの愛されキャラ。引っ張りだこのはずなのに、筆者がおずおずグラスを差し出せば、満面の笑みで丁寧に説明してくれる。ワインのネーミングも「never been to asked to dance(ダンスに誘われてない)」「thief in the night(夜のどろぼう)」などと詩的で美しく、それをダンカン自ら注いでくれるものだから、もう落涙寸前だ。


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取材・文=水上彩 編集=石井節子

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