選挙期間中は、ニューヨーク市の近郊でもゼルディン氏の支持ポスターが多く見られ、私も今回は共和党知事になるのかと覚悟していたほどである。しかし案に相違して現職の女性知事が継続してその職を務めることになり、多くのニューヨーク市民が安堵の気分に包まれている。
このところ共和党知事のテキサス州などからは、民主党が強力な地盤を持つニューヨーク市に、メキシコから国境を越えてきた不法移民の人たちをバスで送り届けており、これはまったくの嫌がらせである。その人数も4月以来1万7500人ほどになり、10月7日にニューヨークのエリック・アダムス市長が緊急事態宣言を出した。
その対策費用は今年だけで5億9600万ドル(140円換算で834億4000万円)になるとされている。市内のホテルが緊急保護施設となると聞いたが、タイムズスクエアのすぐ西にある観光客には便利なミルフォードホテルの一部が突然移民収容施設となり、「あの高級ホテルが」と私も驚いた。テント村もマンハッタンの北のランドールズ・アイランド公園に急遽建設され、受け入れが始まっている。
今回の中間選挙で明らかになったのは、2020年の大統領選の不正を未だに声高に主張し続ける共和党内のトランプ派に対して、そろそろ有権者も飽きが来ており、その波及効果も薄れてきていることだ。
民主党が善戦した選挙結果について、共和党内でもトランプ支持派と非支持派の責任の擦りあいが始まり、分裂が始まっている。もともと保守系メディアとしてトランプ前大統領も支持していたルパート・マードック氏傘下のFOXニュースやニューヨーク・ポスト、そして経済紙のウォール・ストリート・ジャーナルも、トランプ離れを見せ始めている。
政治とは、社会問題の最小化と解決、対立と利害の調整を経て社会を統合するものとされている。今回の選挙結果は、極右でもなく極左でもなく、ツイッターのひと言で社会も株式市場も振り回された前大統領の発言にも飽き、有権者の意識が「もう少し権利を守り、生活を安定させて欲しい」というバランスのとれた地点に戻ってきた結果とも取れる。
Z世代の動向に大きく左右された今回の中間選挙の結果だが、民主、共和、両党とも今後の選挙マーケティングとしては、選挙権を持つ若い世代が増えていくなかで、彼らの声をいかに反映させていくかが、2年後の大統領選挙でもポイントとなるだろう。