学生ローンの免除がZ世代を動かしたか 米中間選挙の意外な結果

Jaime Harrison(左) Joe Biden(右)(Photo by Alex Wong/Getty Images)


もう1つZ世代の投票行動に大きく影響したのが、ジョー・バイデン大統領が、8月に公約した1つである4500万人を対象にした学生ローンの免除。1人当たり1万ドルまで免除するプログラムだ。もともと高額な大学などの学費はローンで賄われることが多い。連邦への学生ローンの残高としては、総額1兆6000億ドル(140円換算で224兆円)になると伝えられている。

「大学は出るだけでもたいへんで、まして大学院で修士まで取得しようとすると、卒業後は高額の給与が得られる仕事に就かないと返済が間に合わないし、その後に自分の住宅を買うことさえままならない」とも言われ、晩婚化と併せて将来の人生設計が遅れがちになっている実情がある。

学生ローンは、自動車、住宅、クレジットカードの債務残高ほどではないにせよ、ずっと信用リスクの火種になりかねないとされていた問題である。高騰する学費をローンで賄い、卒業後もローンの返済に苦しむ借り手に対し、バイデン大統領の公約では、約2000万人の債務を帳消しとすると発表している。

加えてコロナ禍の2020年3月から始まったCARES法(新型コロナウィルス対策法)による学費の返済猶予措置も、2022年末まで延長するとした。但し、この措置は、大学に行っていない人たち、学生ローンもなく働いている人たちからの税金でこの免除を行う点などは、各方面から不公平性を指摘されていたが、Z世代の若者たちからは一定の支持を取り付けた。
 
しかし、中間選挙直後、最高裁は前述のバイデン大統領が打ち出した学費免除プログラムの差し止め命令を出して、依然、実施は不透明な状態だ。こんなところにも保守化した最高裁の存在は大きな影響を及ぼしている。

NYでは現職女性知事が予想外の当選


今回の中間選挙では、アンドリュー・クオモ前知事がセクハラスキャンダルで辞めた後、副知事から昇格したキャシー・ホークル知事が初めて有権者の洗礼を受けて当選を果たした。事前予想はトランプ支持派で銃規制に反対する立場を強く打ち出していた共和党候補のリー・ゼルディン氏の善戦が伝えられており、2006年以来の共和党知事になるかと思われたが、何とか今回の中間選挙では民主党の現職知事が逃げ切ったかたちだ。
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文=高橋愛一郎

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