学生ローンの免除がZ世代を動かしたか 米中間選挙の意外な結果

Jaime Harrison(左) Joe Biden(右)(Photo by Alex Wong/Getty Images)

アメリカの中間選挙は、事前の予想に反して民主党が上院の半数を維持する善戦結果となった。選挙前は、インフレはどこまで進むのかと責任を問われて民主党が惨敗すると言われていたが、下院でも共和党はかろうじて過半数を獲得したが、それほど大差のつかない結果となった。

今回の民主党の善戦は、若い世代の投票行動の影響が大きい。いわゆるZ世代と呼ばれる18歳から29歳までの若い人たちが民主党を強く支持した。Z世代は、1990年代中盤から2010年代前半にかけて生まれた世代で、Windows95がリリースされた以降に生まれ、物心つくころからインターネットが存在した世代である。その数は6860万人程度とされ、有権者の20.6パーセントを占める。

Z世代は、50歳も上の世代の人物を中心にして繰り広げられている選挙戦に対して、地球温暖化対策などの環境問題、人工妊娠中絶の問題など「われわれの世代の意見も反映させよ」という意識が顕著だ。またSNSを使いこなし、相互の意見も伝わりやすく、連帯感も強い。

これまで共和党色の強いフロリダ州にあっても、民主党候補の銃規制活動家マクスウェル・フロスト氏が25歳で下院議員に当選を果たした。フロスト氏は今回の最年少の当選者で、Z世代としても初めて選出された連邦議員となる。

Z世代を引きつけた学生ローンの免除


ドナルド・トランプ前大統領は、任期4年の間に異例の3名の保守派の最高裁判事を任命し、保守派6名にリベラル派3名と、最高裁は共和党の狙い通り一気に保守に傾いた。今年に入って最高裁は、女性の中絶する権利に関して、過去の判例を覆す判断を出してきている。

1970年テキサスの地方裁判所から始まったロー・ウェイド事件裁判で、1973年に最高裁は「妊娠を継続するか否かに関する女性の決定は、プライバシー権に含まれる」とした。しかし今年、この判例を49年ぶりに覆し、プロライフ=Pro-Life側(人工妊娠中絶に反対する側)に立ち、州ごとに「女性の中絶の権利は判断される」とした。

この判例がアメリカの女性層を分断し、中間選挙での共和党支持を削ぎ、無党派層の民主党支持につながったと分析されている。また選挙の結果を大きく左右したZ世代の反発も買ったとも言われている。
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文=高橋愛一郎

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