米国で主流化のオミクロン「BQ.1.1」、抗体薬が効かない可能性も?

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新型コロナウイルスに感染しても、モノクローナル抗体薬があれば治療を受けることができ、命を落とすような事態からは免れると思っているなら、その“戦略”については考え直した方がいいかもしれない。

医学誌「ザ・ランセット・インフェクシャス・ディジージズ」に11月18日に掲載された実験結果は、現在流行しているオミクロン株の派生型が、既存のモノクローナル抗体薬の大半に対して耐性を持つとみられることを示唆している。

さらに、米国で主流となった派生型の一つ「BQ.1.1」は、それらのモノクローナル抗体薬のすべてに、耐性があるとみられるという。

米疾病対策センター(CDC)によると、19日までの1週間に報告された新規感染者のうち、「BQ.1.1」と「BQ.1」への感染が確認された人の割合は、それぞれ24.2%、25.5%だ。つまり、米国ではすでに、主流は「BA.5」ではなくなっている。

これが意味するのは、米国で感染した場合、これまで使用されてきたモノクローナル抗体薬では、有効な治療が受けられない可能性があるということだ。もともと免疫力が非常に弱いなど、ワクチンで十分な予防ができない人たちにとっては、間違いなく悪い知らせだ。

モノクローナル抗体薬が注目を集めたのは、2020年にドナルド・トランプ大統領(当時)が感染し、治療に使用されたときだ。その後、パンデミックの発生以来、ソーシャルディスタンスを取ることやマスクの着用を義務化することなどの感染対策に否定的だったフロリダ州のロン・デサンティス知事(共和党)は、モノクローナル抗体薬による治療の推進に特に力を入れてきた。

「早期の治療が命を救う」と訴えてきたデサンティス知事だが、そうした対応が有効なのは、新たに出現した変異株がモノクローナル抗体薬と“直接対決”し、勝利する力を持つようになるまでの話だ。

実験でわかったこと


ドイツのライプニッツ霊長類研究所とエアランゲン大学の研究者からなるチームは、オミクロン株の派生型(BA.1、BA.4–5、BA.4.6、BA.2.75.2、BJ.1、BQ.1.1)のシュードタイプ(実験用ウイルス)を作製し、実験を行った。
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編集=木内涼子

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