ゲイツ財団が支援する「万能ワクチン」開発を目指す起業家

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インフルエンザの予防接種を渋る人の多くは、「ワクチンを接種してもインフルエンザにかかる人がいる」と話すだろう。インフルエンザワクチンは、重症化の防止に役立つが、発病を防ぐ上で必ずしも役立つものではない。このため、毎年のワクチン接種を面倒に感じる人もいるだろう。
 
「インフルエンザの予防接種の有効性は30~60%程度で、年によっては10%しかない」と、CentivaxのCEO、Jacob Glanvilleは話す。
 
公衆衛生当局は、シーズンごとに流行する株を予測し、インフルエンザワクチンはそれをもとに製造される。流行株の予測が外れると、ワクチンの予防効果は下がることになる。インフルエンザワクチンは、特定のウイルスに対する抗体を作るが、ウイルスは変異が早く、免疫システムが対応できないことがある。
 
Glanvilleは、この問題を解決するため、サンフランシスコでCentivaxを設立した。同社は11月16日、NFXとGlobal Health Investment Corporationが主導したシードラウンドで1000万ドル(約14億円)を調達したことを明らかにした。同社のミッションは、インフルエンザや新型コロナなど様々なウイルスだけでなく、ウイルスの変異にも効く「万能ワクチン」を開発することだ。
 
これが実現すれば、将来的にブースター接種の回数が減ったり、接種しなくて済む可能性がある。例えブースター接種が必要だとしても、流行が予測される株だけでなく、大多数の株に対して効果があるため、感染防止の効果は格段に高まる。
 
今回の調達について、Glanvilleは次のように話す。「調達した資金を使ってワクチン製造を開始し、ヒトでの臨床試験を開始する土台を築きたい」。他には、新型コロナとHIVに効く万能ワクチンの研究をはじめ、他のいくつかの取り組みにも充当される予定だという。
 
Glanvilleは、同社のランウェイ(資金が尽きるまでの期間)を約1年半と見込んでいるが、製品開発を継続するため、今後1年以内にシリーズAを実施する予定だという。Centivaxが開発を進めるワクチンプラットフォームの概念はシンプルだが、あらゆるバイオテクノロジーがそうであるように、エグゼキューションが困難だ。

同社は、同じ病気で過去に発生した複数の株のワクチンを開発している。インフルエンザの場合、1918年に流行したH1N1から始まり、パンデミックを引き起こした複数の株を、ワクチンとしては免疫反応が起きない量に希釈する。
 
その後、インフルエンザの株を結合することで、全ての株に共通するウイルスタンパク質が強化され、免疫反応が起こって抗体が作られる。理論的には、この抗体は全てのインフルエンザ株に加え、共通するタンパク質を持つ他のウイルスも攻撃する。
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編集=上田裕資

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