11月20日にデラウェア州地方裁判所に提出された書類で、バンクマンフリードの会社の破産管財人は、同社が2021年の納税申告書で合計37億ドルの繰越欠損金を計上していたことを明らかにした。つまり、2017年設立のトレーディング会社のアラメダリサーチと2019年設立の暗号通貨取引所FTXを含むバンクマンフリードの事業は、設立以来で合計37億ドル(約5240億円)の純損失を抱えていたことになる。
この巨大な損失は、2つの重要な理由から不可解だ。その一つは、バンクマンフリードが宣伝したスタートアップのイメージと矛盾することで、もう一つは、暗号通貨業界が好景気に沸いた2021年のトレンドに逆行していることだ。
バンクマンフリードはこれまで、自身の会社の財務について多くを語っており、昨年のフォーブスの取材ではアラメダが2020年に10億ドルの利益を生んだと語っていた。さらに、CNBCが8月に報じた2021年のFTXの決算書類には、同社が年間3億8800万ドルの純利益を計上し、黒字であったことが記されていた。また、バンクマンフリードはブルームバーグのインタビューでも、FTXが利益を上げていると繰り返し発言していた。
しかし、バンクマンフリードの会社の納税申告書に基づく法廷提出書類では、それが事実でなかったことが示唆された。この書類には、37億ドルの繰越損失のうち、各年度にどれだけの損失が発生したかが書かれていない。しかし、ビットコインが60%上昇した2021年は、ほとんどの暗号通貨企業が素晴らしい業績を記録し、コインベースの場合は36億ドルの純利益を上げた。ロンドンに拠点を置くWintermuteのようなアラメダの競合も、記録的な収益を上げていた。
WintermuteのCEOのEvgeny Gaevoyは、「アラメダは2021年に数十億ドルの利益を手にしたはずだ」と述べている。このような利益が出ていたとすれば、書類に記載された37億ドルの欠損金は、おそらく以前の年から繰り越されたものと考えられる。
今月上旬のFTXの破綻は、業界に巨大な衝撃を与えた。FTXは、アラメダの損失を隠蔽するために、顧客の資金を不正にアラメダに送金し、それが発覚したことが取り付け騒ぎに発展し、破綻に追い込まれた。
すべてが虚構だった可能性
アラメダが巨額の損失を出した原因については、大きな賭けに失敗した説と、きわめて杜撰な会計処理があった説が有力だ。しかし、これらの説は、暗号通貨が暴落した2022年にアラメダが損失を出した理由の説明にはなるが、それ以前の2021年までの損失の原因は大きな謎のままだ。
アーバン・ブローキングス税務政策センターのスティーブ・ローゼンタールは、37億ドルの純営業損失が実際に発生したものなのか、あるいはその時点での会社の事業と資産価値の現状を示しているのかは不明だと述べている。仮にバンクマンフリードが時価評価法を用いていたのなら、その時点の含み損を表していることになるが、それでもこの数値は驚くべきものだ。ローゼンタールは、「彼が宣伝した収益性はすべて虚構だったのかもしれない」と述べた。
FTXの広報担当者は、フォーブスのコメント要請に応じなかった。
(forbes.com 原文)