ビジネス

2022.11.23 18:00

バレエから学ぶビジネススキル「白鳥の目」によるメタ認知

Forbes JAPAN編集部

「メタ認知(自己客観視)」がビジネスかいわいで持ち上がるようになって久しいが、関連する本や記事を読んでもイマイチ抽象的でわかりにくいし、どうやったら自己客観視できるようになるのかつかみづらい。

筆者が習っているバレエにこそ「メタ認知」の神髄があるのではと、今日は「鳥の目」ならぬ「白鳥の目」による俯瞰のコツを紹介する。


大人になって猫背を直すために始めたバレエ。気づけばもう15年以上続けている。今も週2回レッスンに行き、月に1回は公演を観に行っている。あるときはパリ・オペラ座バレエ団の公演を観るためだけにシンガポールに0泊1日で行ったこともあった。こうなると、もはや猫背うんぬんではなくバレエにドハマりしているが、バレエは観れば観るほどやればやるほど奥が深い。

いきなりだが、YouTubeで「白鳥の湖-新国立劇場バレエ団 3分でわかるバレエシリーズ」と検索し、その動画を観てほしい。

......観ただろうか? 主役はもちろん、周りの白鳥たちも全員同じ角度を保ち、美しく揃って舞台に立っている。全員がもう白鳥にしか見えない。こんなにもみんなが美しく揃って舞台に立っているのには、もちろん仕掛けがある。

仕掛け1「鏡の向こうのお客様」


私がバレエレッスンで先生に口酸っぱく言われるのが、「鏡の向こうのお客様を意識して!」だ。もちろんスタジオの鏡の向こうにお客様がいるわけではないが、自分がお客様に見られていると思うと、急に緊張感が湧いて「自分の立ち姿これでよいのだろうか」と、背筋がシャンと伸びる。弛緩していた表情も引き締まる。

ダンサーは舞台上の自分を見られるのが仕事であり、常にお客様から見ていちばん美しい自分を舞台上で実現するから、あの美しさが生まれるのだ。

仕掛け2「フォーメーションの美学」


バレエには厳格なフォーメーションの美学がある。例えば「斜め45°」。お客様から美しく見える角度であり、全員がそれを意識して顔や体の角度をつける。ただし注意したいのが「あなたとわたしの斜め45°は違う」ということだ。ダンサーがそれぞれの立ち位置からの斜め45°を守るわけなので、全員が同じ角っこを向くということはありえない。

私のバレエの先生は、レッスン中「トマトとモッツァレラチーズ(=カプレーゼ)のように並びなさい」と指導するが、みんなが同じ角度を保ちながら平行に並んでいるから、ビシッと揃って美しく見えるのだ。

バレエは全員でひとつの舞台をつくり上げる総合芸術であり、ひとりでもズレたら全部が台無しになる。だからこそ、総合芸術をつくり上げるための理にかなったフォーメーションがあり、そのフォーメーションを寸分たがわず実現できているからこそ、全員が白鳥のように見えるのだ。
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文=野田千尋 イラストレーション=尾黒ケンジ

この記事は 「Forbes JAPAN No.095 2022年月7号(2022/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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