自閉症者が「視線を合わせない」ことを好む理由

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PLOS One」に掲載された新しい研究で、イェール大学の研究者たちは、独創的な技術を使い、後頭頂領域として知られている自閉症の社会的症候と関連する脳の特定の領域を突き止めた。

自閉症の人々の大多数は、社会的な交流の際に目と目を合わせないという選択をする。自閉スペクトラム症(ASD)の有病率は少なくとも500人に1人だが、いまだに広く誤解され、スティグマ化されている複雑な神経発達症であるとされている。

2人以上の人間によるリアルタイムのやりとりは、人の表情やアイコンタクトが主な情報源とされる動的かつ相互作用的なものになる傾向がある。

実生活での会話や交流の中で、顔から重要な情報をシームレスかつ戦略的に得ることは、自閉症の成人にとって大きな障害となっている。「ASDにおける現実の顔によるやりとりを調査することの重要性は、最近『二人称の神経科学』を求める声によって認識されています」と、研究者は論文に記している。

「私達の脳は他の人々に関する情報に飢えており、ASD患者だけでなく、定型発達者もこれらの社会的メカニズムが、現実の対話的な世界の文脈でどのように作用するかを理解する必要があります」とイェール大学の精神科医であるジョイ・ハーシュは、プレスリリースで述べている。

ハーシュら研究者はさらに、ASDのような神経発達疾患は多面的であり生物学的、認知的、行動的、社会文化的など、幅広い要因を考慮する必要があることを論文で認めている。

しかし、これまでニューロイメージング技術は「実際の社会的相互作用中の動的な顔処理」に関する情報を収集するには不十分であることが判明している。「この分野の方法の開発と、ASDにおけるこれらのプロセスとそのバリエーションの基礎となる神経生物学おける進歩が課題となってきました」と、研究者は説明している。

さらなる調査のため、研究チームは、非侵襲光学的な脳機能イメージング法である機能的近赤外分光法を使用した。彼らは、参加者の脳に光を照射するセンサーがたくさんついた帽子をかぶせた。そして、被験者が目と目を合わせているときの脳活動のデータと一致するこの光信号の変化を記録し分析した。

驚くべきことに、自閉症の被験者が他の参加者と目を合わせるたびに、後部頭頂皮質という脳の領域で活動が低下していることがわかった。しかし、ASDでない参加者は、アイコンタクトをとっているにもかかわらず、このような脳活動の変化を記録しなかった。

「我々は現在、社会性の差異と自閉症の神経生物学についてより良く理解しているだけでなく、典型的な社会的つながりを駆動する根本的な神経メカニズムについても理解しています」と、ハーシュは付け加えた。

forbes.com 原文

翻訳=上西 雄太

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