起業家の輩出と成長を後押ししようとする機運が日に増して高まっている。2022年を「スタートアップ創出元年」と位置づける岸田文雄首相は、6月7日に閣議決定した「骨太方針2022」で、スタートアップへの投資を重点分野に盛り込んだ。
スタートアップ企業数の「5年10倍増」を視野に、年内に5カ年計画をまとめる方針を打ち出している。
同年7月にはスタートアップ担当相を新設する方針も明らかになった。資金調達の困難さの解消、人材の育成・確保、研究開発・販路開拓の支援、起業拠点の整備などの仕組みがますます整備されていく公算が大きい。
民間では、ベンチャーキャピタル(VC)による資金供給を筆頭に、日本版スタートアップ・エコシステムの構築が着々と進んでいる。INITIALの調査によると、21年の国内スタートアップ資金調達額は前年比46%増の7801億円(1月25日時点)と過去最高を記録。後から判明するデータも考慮すると、実態としては8500億円程度となる見込みだ。
22年の足元では、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げやウクライナ危機などの影響でリスクマネーの供給に世界的な地殻変動が起きているが、シード・アーリー期スタートアップについては、「影響は軽微」との見方が国内のVCでは多勢を占める。
インキュベイトファンド代表パートナーの村田祐介は、「未発表のものも含め、ここ数年でファンドレイズが盛んに行われた結果、国内VCのドライパウダー(待機資金)は相当な額が積み上がっている」と話す。
実際、シード・アーリー選好型のファンドは21年だけで新たに39本が設立。その総額は1531億円と、15年比で約5倍に増大している(INITIAL調べ)。22年には、再生可能エネルギー導入・調達コンサルティングのクリーンエナジーコネクト(20年4月設立)が76億円、クリーンエネルギー輸送運搬船を手がけるパワーエックス(21年3月設立)が41.5億円の調達を行うなど、創業3年目以内での大型調達はむしろ勢いづいている印象だ。
創業3年目以内のスタートアップ起業家・経営陣を応援するForbes JAPANのプロジェクト「RISING STAR COMMUNITY 2022」が6月16日に開催したピッチイベントは、こうした勢いを如実に感じさせるものだった。