ここでは、いくつかの項目でAWA SAKEの魅力をシャンパーニュと比較しながら考察し、その可能性を探っていきたい。
・歴史と認知度
フランスにおいて原産地統制名称の概念が生まれ、「シャンパーニュ」の境界線や品質規制がなされるようになったのは1900年代前半。そして1936年に、シャンパーニュは原産地統制名称として正式に認知されることとなった。そのシャンパーニュは今や、世界の食前酒・乾杯酒として定着している。背景にあるのは、シャンパーニュ委員会やモエ・エ・シャンドン社のような大手シャンパーニュメゾンの巧みなプロモーション戦略だ。
一方、AWA SAKE協会が設立されたのは2016年。呼称の歴史を比べれば、そこに80年もの差があるのは事実だが、今は1900年代とは全く異なる情報サービスが確立されている。国内ならびに世界に向けてのプロモーションを効率的におこなうことで、よりスピード感をもって世間に周知していくことが可能なのではないか。そこには協会や会員蔵の積極的な情報発信が不可欠となってくるに違いない。
・価格と入手困難度
各社のAWA SAKEの販売価格を見てみると、2000円台から10000円を超えるものまでラインアップしている。平均的なところで見るとシャンパーニュに比べややAWA SAKEの方がお手頃な印象だろうか。
ちなみに、昨今シャンパーニュの価格高騰と在庫不足が叫ばれている。円安や輸送コストの増幅など様々な理由があるが、シャンパーニュに手が届きにくくなっているこのタイミングは、国内の消費者に、乾杯酒のもう一つの選択肢としてAWA SAKEを訴求する絶好の機会となるかもしれない。
・味わいの個性
AWA SAKEの味わいは酒蔵によって様々。フルーティーなもの、酸味がやや強いもの、旨みがしっかりしているものなど、それぞれ違った個性を楽しむことができるが、全般的には「米ならではの穏やかな甘味主体の親しみやすい味わい」が特徴と言える。
一方シャンパーニュは「酸とミネラル主体の通向けの味わい」と捉えることができる。シャンパーニュの凛とした緊張感は唯一無二の魅力ではあるが、ホッとするようなピュアで優しい味わいはAWA SAKEならでは。洗練された酒質の中に感じる「親しみやすさ」は世界の様々なシーンや食事に寄り添う可能性を秘めていると言えるだろう。