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2022.12.16

サステナビリティへの投資が企業価値を高める ー PwC×日立対談

PwC Japanグループ 磯貝友紀(左)と日立製作所 ロレーナ・デッラジョヴァンナ(右)

いまやSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)は、企業戦略にとって欠かせない要素だが、サステナビリティと収益性を両立させるのは容易ではない。そのサステナビリティを成長戦略の中心に据え、先頭を走っている1社が日立製作所だ。

PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス、リード・パートナーの磯貝友紀が、日立製作所チーフ・サステナビリティ・オフィサーのロレーナ・デッラジョヴァンナ氏とSXの実現に向けて語り合った。

「日立の創業以来の使命は、イノベーションによって社会に貢献することです。人々の生活をよりよくすることこそが、日立にとっての根底にあります。プロダクト、OT(オペレーションテクノロジー)、ITなどさまざまな面で豊富な経験を有し、広範な産業で事業を行っているため、それらのリソースを活用すれば、真にサステナブルな社会を創出することに貢献できるはずです」

デッラジョヴァンナは、日立製作所のサステナビリティへの決意をそう語った。その取り組みをさらに加速させるため、同社は4月に経営構造を強化し、新たに「チーフ・サステナビリティ・オフィサー」を設けた。そのポストに就任したのがデッラジョヴァンナだ。同社は、サステナビリティに関わる組織をチーフ・サステナビリティ・オフィサーの指揮下に置いた。

世界の全拠点が同じマインドでサステナビリティを推進


サステナビリティ戦略を各事業部が実行することに難しさはないのか。磯貝が問いかけると、デッラジョヴァンナは、「日立ではいかなる戦略も本社の上層部だけで決めることはない。必ず各事業部と合意のうえで決める」と語った。

日立製作所チーフ・サステナビリティ・オフィサー ロレーナ・デッラジョヴァンナ

「プロセスは、トップダウンであると同時にボトムアップであり、横断的にすべての事業部がつながっています。サステナビリティを推進するための組織を立ち上げ、この組織がグローバルの方針を立て、それぞれの地域で実践しています。世界の各地域に代表者を置き、サステナビリティ課題に適切に対処するとともに、どんな問題も取り残すことがないよう図っているのです」

次に日立製作所のサステナビリティ戦略における優先課題である気候変動とGX(グリーン・トランスフォーメーション)の実現に向けての取り組みを紹介した。

「私たちのGX戦略は、ふたつの柱を中心としています。まず事業運営そのものをロールモデルにする、これを“GX for Core”としています。もうひとつはお客さまや社会の課題解決に貢献することであり、“GX for Growth”。それぞれに組織を設け、両組織が一体となって機能しています。例えば自社の脱炭素化のために開発した技術をお客さまにも提供できるのです」

「気候変動やGXに関しては、脱炭素化のKPIを設定しました。(自社の排出である)スコープ1と2では2030年までにカーボンニュートラルを達成し、2050年までに、世界中のバリューチェーン全体でカーボンニュートラルを実現することを目指しています。加えて“GX for Growth”に関しては、『2024年度までに顧客および社会における年間1億トンの二酸化炭素排出削減に貢献する』というKPIを定めました」
 

サステナビリティへの投資は単なるコストではない


磯貝は、日立製作所の戦略を自社の活動をお客様に展開する興味深い取り組みであるとした一方で、多くの企業では脱炭素化が進まない現状を問題提起した。

「サステナビリティ経営で重要なのは、長期にわたって利益を出し続けるためにリソース配分を行うことです。例えば気候変動が長期的に自社にどのような影響を与えうるか想定したうえで、戦略を描き、投資判断をしていくことが求められます。脱炭素化を非常に真剣に捉えている企業もありますが、いまだに多くの企業は、『コンプライアンス』の問題と捉えていて、できることなら余計なコストはかけたくないと考えています。」


PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス、リード・パートナー 磯貝友紀

その問題に対し、デッラジョヴァンナはふたつの側面から解決策を提示した。ひとつは、日立製作所の支援のもと、企業がなるべくコストをかけずに脱炭素化に取り組めるようにすることだ。

「当社では、『XaaS型(アズ・ア・サービス)』といった新たなビジネスモデルへ転換し、お客さまのアセットライト化のご支援をしています。それにより、お客さまはより手軽に脱炭素化の取り組みをはじめられますし、パートナーも巻き込んだエンド・ツー・エンドのソリューションを提供することができます。どのような活動でも、私たちは必ずパートナーシップを組むことを検討します。日立グループは非常に大きなコングロマリットですが、それでもこの気候変動という問題に単独では太刀打ちできないからです」

もうひとつの側面としてデッラジョヴァンナは、「サステナビリティへの投資が単なるコストであるという認識を変えるべきだ」と提言する。

「内部で分析を行ったところ、サステナビリティへの投資が会社の企業価値を高めることが明らかになりました。上場企業の場合、投資家がサステナビリティやESGの側面からも投資対象を評価することは誰もが知っています。サステナビリティは、どの企業に投資するべきかという判断材料のひとつになるのです」

同じことは消費者や顧客にも言えるという。

「消費者は同じような製品を買うなら、サステナビリティに投資している会社の製品を選びます。また最近では、指定された仕様や価格に対応していても、ESGの面で相手の求める水準に達していなければ、顧客からサプライヤーとして選んでもらえないことがあります」

磯貝は消費者に関して実施したPwCの調査を引用し、商品購入の際に、環境・社会への配慮を行っている消費者が日本は対象国の中で最も低いものの44%、その他米国、英国、中国がそれぞれ51%, 58%, 89%存在することを示したうえで、サステナブルであることは競争優位につながることを紹介した。

サステナビリティをビジネスに組み込んでいかなければならないと考えるに至った経緯について磯貝が問うと、デッラジョヴァンナは、「ビジネスそのものにとっての利点・利益は何かということを考えている」と応じ、その答えのひとつを示した。

「サステナビリティに投資しなかった場合、資本コストがどれだけ増えるのか。というのも、最近では世界の大半の銀行が、ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)に加盟し、ネットゼロに寄与する融資を行うことを公約しています。つまり、グリーン戦略を立てていない企業は融資を受けられなくなるか、受けられてもそのコストが高くなる。脱炭素を推進することは事業の運営効率を上げるだけでなく、経営コストを下げることにもつながるのです」

サステナビリティは究極の生き残り戦略


磯貝は、PwC Japanグループの坂野俊哉と共同で『SXの時代』『2030年のSX戦略』(日経BP)を上梓している。前者のサブタイトルの「究極の生き残り戦略としてのサステナビリティ経営」は、デッラジョヴァンナの主張に合致すると磯貝は言及した。

デッラジョヴァンナは、「まさにその通りだ」と同調したうえで、戦略策定のために進めていることを紹介した。

「外部のステークホルダーや競合他社、政府、投資家などに対話をするよう声をかけているところです。外部の方と話をすれば、誰もが同じ課題に直面していることが分かるからです」

磯貝は「かつて戦略は企業にとって固有のものであり、密室でつくられていたが、戦略の策定の仕方が変化している」と指摘したうえで、戦略を実行するにあたって障壁となるひとつがデータの扱い方であると言及。日立製作所がどのようにデータを収集し、処理し、分析しているかを問いかけた。

デッラジョヴァンナは、「昨年のCOP26でも、世界経済フォーラムや気候変動に関する政府間パネル(IPCC)でも、誰もが透明性について言及しているように、データの追跡や透明性、計測が必要である」と強調した一方、データの計測と収集が世界中で悩みの種になっていることを指摘したうえで、日立製作所の取り組みを紹介した。

「日立にはITや製品関連のケーパビリティがあり、『MRV』と呼ぶ『計測(Measurement)』『報告(Reporting)』『検証(Verification)』のためのソリューションを開発しています。私たちが開発しようとしているのはエンド・ツー・エンドのソリューションであり、プロジェクトのデザインからESG情報開示までをカバーできるものなのです」

磯貝は、データにはどのように効率的に収集するかなどの課題があると指摘しそれにどう対処すべきかと投げかけると、デッラジョヴァンナは「人事、炭素排出、環境関連データなどを集め、正確性を確認し、そのうえで目標を定めて測定し、情報開示する透明性が大切だ」と述べたうえで、計画の重要性を強調した。

「サステナビリティの課題に立ち向かうには、目標を定める必要がありますが、それ以上に重要なのが、目標に取り組む過程。ロードマップやアクションプランのほうが重要です。外部のステークホルダーは、目標達成のために明確な計画が定められているかを注目するからです。もはや、目標を立てるだけではなく、確実にその目標を達成する必要があるのです」

磯貝はデータに関して、新たなデータ競争が生まれつつあることを指摘した。「収集したデータに基づく経営管理を拡大し、そこにサステナビリティ要素を加えることで、コストと環境影響の削減を同時に実現するような取り組みです。情報開示のためだけにデータを収集するにとどまらず、それらのデータをいかに価値創造のために活用するかが非常に重要です」

最後にデッラジョヴァンナは、大局的な視点からサステナビリティがビジネスのまさに中核にあることを認識すべきであり、事業規模に関わらず、あらゆる企業にとって、対応の遅れが市場競争での生き残りを左右しかねないことを指摘した。

企業のサステナビリティへの取り組みは待ったなしであり、長期的な視点に基づきすぐに行動を起こす企業が、消費者の支持を得て、新しい市場を開拓していく時代となりつつある。

PwC Japanグループ サステナビリティ経営支援サービス
https://www.pwc.com/jp/ja/services/sustainability-coe.html

ロレーナ・デッラジョヴァンナ◎日立製作所執行役常務チーフ・サステナビリティ・オフィサー兼チーフ・ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン・オフィサー(CDEIO)兼グローバル環境統括本部長。南ヨーロッパ地域財務担当役員、ヨーロッパ域内シェアードサービスビジネスディレクターなどを経て22年4月より現職。

磯貝友紀◎磯貝友紀◎PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス リード・パートナー。日本企業のサステナビリティビジョン・戦略策定、SXの推進、サステナブル投融資支援の実績多数。

Promoted by PwC Japan Group / Text by Fumihiko Ohashi / Photographs by Ryo Kosui / Edit by Kana Homma

連載

環境・社会と利益を両立させる、SXという経営戦略