ビジネス

2022.11.28

なぜ「マーケティング部」がある組織はダメなのか

オルビス社長の小林琢磨(左)、グロースX社長の津下本耕太郎(右)(撮影=小田駿一)

「経営こそマーケティングである」という言葉に象徴されるように、マーケティングの重要性が高まっている。

マーケティング学習アプリを展開し、マーケティング人材育成サービス運営を行うグロースX社長の津下本耕太郎が、優れた「マーケティング×経営」を実践する経営者として推薦したのが、スキンケアを中心にビューティーブランドを展開する、オルビス社長の小林琢磨。

二人の対談から見えてくるマーケティング、経営の最前線とは。


津下本耕太郎:小林さんは、ポーラ・オルビスグループの社内ベンチャーであるDECENCIA(ディセンシア)の経営を8年、現在ではオルビスの社長として、企業規模を問わず、成果を出されています。

マーケティングという観点では、歴史あるオルビスというブランド内で、社長就任後、第二創業期としてリブランディング、構造改革、組織改革を実行し、東京・表参道にブランド初となる体験特化型施設『SKINCARE LOUNGE BY ORBIS』のオープンや、アプリコアのCX(顧客体験)戦略、物流センターの自動化など積極的に変革を進めてきました。

特に、テクノロジーを活用したブランド体験価値向上の要となるオルビスのアプリは、ダウンロード数460万強と強固な事業基盤になっています。私も先日、店頭で接客を受けた際にアプリをダウンロードしましたが、メリットもわかりやすく、とてもスムーズな体験でした。マーケティングだけでなく、店舗のオペレーションもすべて繋ぎ込んでいることが、成功につながっているように思いました。

オルビスには、社内教育の一環として、「マーケティングの基礎」について当社サービスを活用いただいておりますが、今回の対談のなかで、小林さんに伺いたいのは、オルビスという歴史も長く、顧客の年齢層も広いブランドのなかで、どのようにDX推進を行っていたのか。経営、組織という観点からお伺いしたいです。

小林琢磨:2018年に社長就任以降、2つの考え方を実行してきました。1つは、「ブランドの一貫性」という考え方です。就任後、リブランディングをかけて、CI(コーポレートアイデンティティ)まですべて変えました。2つめは、LTV(ライフタイムバリュー、顧客生涯価値)を重視することを大きな目的にしました。

1つめのブランドの一貫性ですが、オルビスは、総合カタログ通販でした。我々は1987年に創業し、今年35周年を迎えるブランドで、カタログ通販市場が成長した1990年代後半から2000年にかけて大きく成長してきました。

「(化粧品メーカーにも関わらず)下着から雑貨、キッチン洗剤まで販売する」という小売業のようなビジネスモデルでしたね。ただ、アマゾン、楽天のようなECモールができ、スマートフォンが普及し、かつ、たとえば、家具ならば、その専門店あって細分化している時代の流れの中で、変革をしなければいけない状況でもありました。

こうしたなかで「ブランドとして購入していただく意味」や「ベネフィットを感じていただく」ことをつくっていかなければいけませんでした。

その結果として、LTVをKGI(重要目標達成指標)にすることにつながっていきました。社長に就任してから、1年でコーポレートロゴまで変えるリブランディングを行いました。爆速でしたね。
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文=山本智之 写真=小田駿一

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