このような設備投資を、新たに莫大な負債を抱えることなく行うには、従来の内燃機関自動車のビジネスが健全であることが必要だ。最も利益率の高いモデルラインの生産を優先してきた他の自動車メーカーと同様、GMもあらゆるピックアップトラックや大型SUVを生産・販売している。その結果、同社は2022年の利益見通しを135〜145億ドル(約1兆9000億〜約2兆円)、フリーキャッシュフローを100〜110億ドル(約1兆4000億〜約1兆5300億円)に引き上げた。
ジェイコブソンCFOは「2025年までには、EVポートフォリオのEBIT(利息および税金控除前利益)が一桁前半から半ばのマージンに改善されると予想しています」という。「これは、Ultiumで生産されるセルの増産だけでなく、組み立て工場の拡大も大きな原動力となるでしょう」
EVの収益に貢献すると期待されているのは、電動商用車のブライトドロップである。GMは2021年1月にブライトドロップ事業部の設立を発表し、同年末までに少数ながら最初の電動配送バンを納品した。初期のモデルはデトロイト近郊の施設で大部分が手作りされていたが、2023年中にオンタリオ州インガーソールのCAMI組立工場でZevo 600とZevo 400バンの恒常生産が始まり、2025年までには年間5万台が生産される計画だ。ブライトドロップは、2023年末までに、車両販売と関連する車両管理サービスから10億ドル(約1400億円)の売上を達成することが見込まれている。
また、GMとそのディーラーが展開する新しいデジタル・リテール・プラットフォーム(DRP)が、車両の購入プロセスを効率化することが期待されている。顧客は、オンラインで注文・購入し、納車部分だけディーラーが関与する方法や、自分でディーラーを訪問して実車を確認・試乗する従来の方法まで、希望する体験内容を選択することができるようになる。GMによると、1台あたりの小売販売コストを最大2000ドル(約28万円)削減できる見込みだという。
DRPの一環として、GMは地域ごとにフルフィルメントセンターを運営し、そこに電気自動車の自社在庫を保管する。3つのセンターがすでに稼働している。各販売店は、顧客の試乗や評価のための在庫を抑えることができる。フルフィルメントセンターは、販売店が通常持つものよりも豊富な在庫を取り揃えることになる。顧客がGMの新型EVをオンラインで注文すると、4日以内に納車することができる。
これらすべてを達成することは容易ではない。GM が20年代の終わりまで、利益率の高いガソリン燃料車を販売し続けることができなければ、それは不可能だろう。とはいえGMは、この20年代の後半には、事業を継続できるかたちでEVを大量に販売できるような戦略をとっているようだ。
(forbes.com 原文)