馬を育てれば、人が育つ。西海岸トップボーディングスクールの秘密

Thacher School ウェブサイトより


学校にもパーソナリティーがある


授業料は年間7万ドル(1ドル140円で換算すると980万円)だから、米国でも最も高額な学校の部類だろう。同時に、奨学金が非常に充実しており、約50%の生徒がなんらかの奨学金を得ているという。

留学生の割合は10%強とそれほど高くはないが、国内の地理的・人種的なダイバーシティの追求にはかなり力を入れていることが窺われる。

施設は決して華美ではなく、新しくできたGates Center以外の建物は年季も入っているように見える。他のボーディングスクールが新しく豪華な設備を誇るのとは対照的である。しかし、その中にもまたThacher Schoolが「何を本当に大切にしているか」の哲学を感じる、と書くと言い過ぎだろうか。

Thacher School ウェブサイトより

前回紹介したCate Schoolと並んで西海岸の両雄と称されるThacher Schoolだが、両者が全く異なった特徴を持つことに驚かされる。私が出張や旅行のたびに学校を訪問するのは、実際に訪れてみなければわからない「学校のパーソナリティー」に触れることができるからだ。

高校は大学への受験準備のために存在するのではない。人生で最も多感な時期の人格形成の場である。自分に最も合う学校を見つけるという営みは、大人のお見合いにも例えられるかもしれない。紙の上の条件や数字からは決してわからない、人柄、価値観、立ち居振る舞い。人にとってそれらが大事なのと同様、学校のパーソナリティーと生徒の出会いは極めて重要だと感じる。

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筆者撮影

そこに上下、良し悪し、といった物差しはない。本コラムではあくまでも私のレンズを通して興味深いと感じた学校を紹介しているが、ぜひ読者の皆さんにも旅行や出張の際に少し足を伸ばして、様々な学校をご覧いただけたらと思う。

そして日本にも、このように一度見たら忘れられないほど印象的な学校が、多様な特徴を持つ複数の学校が、増えていくことを望んで止まない。

文=小林りん

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