馬を育てれば、人が育つ。西海岸トップボーディングスクールの秘密

Thacher School ウェブサイトより


McMahon氏もYates氏も、Positive Risk Takingのために「新しいことに挑戦して時には失敗すること」「コンフォートゾーンを出ること」の大切さを何度も語ってくれた。

確かに、東海岸の名門校などを訪問すると、バイオリンで全国何位、数学オリンピックで世界何位、という話はよく聞くものの、次から次へと新しいことに挑戦させられる、という印象はない。

Thacher Schoolでは、乗馬に加えてサーフィンからロッククライミングまで、経験したことがないことをどんどん生徒たちに薦めていく。スポーツも、何か得意なものをとことんやるのもいいが、やったことがないスポーツのチームに入ることも素晴らしい、という方針。「コンフォートゾーンを出る」ためだ。


Thacher School ウェブサイトより

極め付きは、1年に1度全校生徒に参加が義務付けられている5泊6日の登山。それだけの期間に必要な食糧や水を持つと考えただけで気が遠くなるが、それを担いで登山だというから、大変なことである。高校で山岳部だった私も2〜3泊までは経験もあるが、5泊6日と聞くとたじろいでしまう。しかしこれこそがPositive Risk Takingであり、究極のチームビルディングである、ということも納得できる。

Be Bold


この学校の特徴を一言で表せと言われたら、「bold」かも知れない。飾り気のない、ありのままの自分。荒々しい大自然に抱かれて逞しく育っていく高校生。アドミッションズオフィスの二人が繰り返し言っていた「Thacher School is not for everyone.」という言葉がよく理解できる。

人によっては、14歳でこの経験をする準備ができていないからだ。あるいは一生できないかも知れない。Yates氏いわく、「ここでは誰もブランド物の時計や服など身につけていない。朝から馬糞掃除だから、そんなもの着ていられないよね(笑)」と。


Thacher School ウェブサイトより

寮の部屋をでたら、携帯電話も禁止。「コミュニティでは人と人とが目を合わせ会話をすることが大事」だからだ。多くのティーンエイジャーにとっては苦行のように思えるかも知れないが、ここにもやはり明確な教育哲学を感じる。
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文=小林りん

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