馬を育てれば、人が育つ。西海岸トップボーディングスクールの秘密

Thacher School ウェブサイトより

ロサンゼルス国際空港から、乾いたカリフォルニアの大地を運転すること1時間半。可愛いカフェも点在するヒッピーの街、Ojai Valley(オーハイ・バレー)に到着する。

この街から山をひたすら登ったところに、Thacher Schoolはある。最近は日本の子女もほぼ毎年のように1、2名は留学していることで知られる、西海岸の名門ボーディングハイスクールである。設立は、前回紹介したCate Schoolより数年早い、1889年。

Positive Risk Takingとは


この学校に興味を持ったのは、数カ月前にアドミッションズディレクター、Bill McMahon氏とインタビューをしたことがきっかけだった。

「ティーンエイジャーとは、元来リスクをとりたがるものである。故に、Positive Risk Takingのチャンスを散りばめることで、飲酒やドラッグなどNegative Riskをとる暇や必要がなくなる環境を作る必要がある」という哲学を、実に明瞭に語ってくれたのが大変印象的だった。


Thacher School ウェブサイトより

今回案内してくれたA.J.Yates氏も、全く同じことを話してくれた。私学経営者としては、明確な教育哲学があり、コミュニティのメンバーが一貫して同じ言葉でそれを語れるというのは、極めて重要なことであると感じる。
 
Thacher Schoolの場合、それを象徴するプログラムが「馬」だ。

一年生は一人一頭


一年生は一人一頭馬をあてがわれ、年間を通じて自分の馬の面倒を見なくてはならない。朝起きたら、自分の食事の前にまずは馬糞掃除と馬の餌やりから1日が始まる。生き物だから、生徒の機嫌が悪かろうが忙しかろうが、「スイッチオフ」というわけにはいかない。

子育てを経験した人なら、このことがいかに人を成長させるか、また人を新しいチャレンジへと導いてくれるか、痛いほどわかるに違いない。14 歳でこの経験をするというのは、全ての子どもにとってベストかはわからないが、人生に大きなインパクトをもたらすことが容易に想像できる。


Thacher School ウェブサイトより
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文=小林りん

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