W杯で注目浴びるカタールの人権問題、抗議行動に出る選手も


オーストラリア代表選手だけでなく、他国の選手も、大会中に抗議を行う意向を示している。デンマーク代表選手は、人権に関するカタールの前歴に抗議を込めて、「ロゴなどが目立たない」ユニフォームを着用する予定だ(ただし、国際サッカー連盟=FIFAは、「human rights for all(すべての人に人権を)」とのスローガンが書かれた練習着を着用したいとする同国チームからの要請を却下した)。

また、欧州から出場する代表チームの主将10人は、多様性とインクルージョンを促進するメッセージを込めた「One Love(1つの愛)」と書かれた腕章を着用する。

カタールで開催されるワールドカップを主催するFIFAは、出場チームに対して「サッカーに集中する」よう要請し、サッカーという競技は「道徳的な教訓を伝える」ものではないと述べている。

選手の中には、ワールドカップがカタールで開催されることについて、自分は意見を表明する立場にはなく、どんな抗議行動をするべきか、そもそも抗議をすべきかどうかについても明確な意見はないという者もいる。筆者が以前にインタビューした、今大会に出場予定のある選手は、「私はサッカー選手であり、政治家ではない。これは難しい問題だ」と述べていた。

「リバプールFC」のユルゲン・クロップ監督は、カタールの人権問題について、選手が抗議の意思表示を必ずするべきだとは思わない、との考えだ。

クロップ監督は11月、スカイ・ニュースに対して「この問題を話題にすることについては100%理解できるが、今、選手に対してこの話題を持ち出して責任を負わせるのはフェアではないだろう。10年以上前に、選手以外の人が決めたことであり、私たち全員が(カタールでワールドカップを開催するという)決断を受け入れていた」と語ったと、ジ・アスレティックは伝えている。

ワールドカップのカタール開催に関しては、FIFA、および、同国での開催に賛成票を投じた同連盟の理事たちに責任があるという、クロップ監督の指摘は正しい。また、FIFAの前会長で、選考過程を取り仕切ったゼップ・プラッターも先ごろ、カタールでのワールドカップ開催は「間違い」だったと発言した。

また、すべての出場選手に対して、カタールでの人権問題について雄弁に語ることを期待するのもアンフェアに見える。ほとんどの選手は、ワールドカップ開催が決まり、ここでプレーするよう言われるまで、この国についてほとんど知らなかったはずだ。

冒頭で紹介した動画でオーストラリア代表の選手たちが言っているように、サッカー選手は人権問題の専門家ではない。だがそれと同時に、スポーツ選手は、人の手本になる存在でもある。ソーシャルメディアでは数百万人ものフォロワーを抱え、若いファンたちは選手のあらゆる発言や行動に注目している。本人が求めているかどうかを問わず、選手は、意見を述べる場を手にしているのだ。

さらに言えば、カタールにおいて女性や外国人労働者、LGBTIQ+の人たちが直面する現実について、知識を深める時間もあったはずだ。声を上げることにためらいを覚えていたとしても、今となっては、「知らなかった」は言い訳にならない。

なお、抗議行動を選ぶ選手が一部にいる一方で、カタール大会でのプレーを拒否した選手は、今のところ1人もいない。

forbes.com 原文

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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