ビジネス

2022.11.18

大量レイオフで崩れ去る、「従業員は家族」という神話

Andrey_Popov / Shutterstock.com

「会社はひとつの家族である」という考え方は、徹底的に崩れてしまった。景気がよかった頃のハイテク企業は、優秀な人材に多額の給与、特典、アメニティを提供していた。しかし、経済情勢が変化したいま、2022年だけで新興企業やハイテク企業から11万9155人がレイオフされ、今後もさらに増えると予測されている。

家族なら子供をクビにしない


景気が悪いときでも、家族なら子供を解雇したりはしない。だが、いま実際に起こっているのはそういうことだ。

メタは、メタバースへの悲惨な進出、プライバシー問題、TikTokの台頭によって、市場シェアを奪われ、出し抜かれ、苦境に立たされている。マーク・ザッカーバーグCEOは、1万1000人の従業員が職を失うことになると発表した。

状況がひどくなると、ザッカーバーグは、自分の報酬を減らすのではなく、勤勉な従業員や契約社員を減らすというお決まりの行動に出た。彼は、世界で最も裕福な人物のひとりだ。もし、会社が本当に家族であるならば、家長は、多くの人を手放す代わりに、責任を認め、他のコスト対策を講じたはずだ。

イーロン・マスクは、同世代で最高の起業家のひとりとうたわれていたが、ツイッターで機能不全の家族を作ってしまった。マスクは就任早々、無情にも、数百万ドルの退職金の支払いを避けるためとして、「正当な理由で」数人のトップエグゼクティブを追い出した。

同社元CEOのジャック・ドーシーは、パンデミックが始まったときに、ツイッターの従業員は永遠にリモートで働けると約束した。だがその約束は、マスクが全員にオフィスへの復帰を呼びかけたことで破られてしまった。ドーシーのメッセージに基づいて、本社のあるサンフランシスコから引っ越していたため通勤不可能だった従業員や、ライフスタイルを変えることができない従業員には、ほとんどなんの配慮もされなかった。

家族ではなく、ただのビジネス


何十年ものあいだ、企業は自分たちを幸せな大家族だと宣伝してきた。企業での仕事を受けることは、新しい家族への入口とされた。家族のために働くことで、従業員は評価され、大事にされ、感謝されているように感じるわけだ。

しかし、現実はまったく違う。それは単なる取引だ。従業員は特定の役割のために雇われ、その時間とサービスに対する報酬を提供される。

期待を上回り、高い生産性を発揮すれば、より多くの報酬やボーナス、昇進が与えられる。一方、期待に応えられないと、業務改善計画の対象者となり、人事部や、直属の上司、上級管理職によって精査される。会社の査定基準に従って改善されなければ、出口を指し示されることになる。

これは、家族の一員としての接し方ではない。家族では、全員を無条件に愛し、サポートするのだから。

家族といううたい文句は狡猾だ。ちょうどパパやママに認められたいと思うように、上司を喜ばせ、長時間労働や週末出勤をしなければならない、と思わせる。十分に働いていないと、兄弟姉妹を失望させているのではないかというプレッシャーを感じるようになる。

会社はスポーツチームのようなもの


職場はスポーツチームのようなものだ。フランチャイズのオーナーは、優秀な選手を探し出し、巨額の報酬を提供する。巨額の報酬は、選手たちが勝とうとするモチベーションを高める。試合に勝てば、スタジアムに観客が集まり、テレビやオンラインで有利な契約ができ、関連グッズが売れるなど、収益の流れができる。

オーナーやマネージャーは、スター選手を愛している。しかし、愛した選手の才能に陰りが見え始めると、オーナーはその選手を他チームにトレードして、より優秀で若い新星を獲得する。会社でも同じだ。うまくやれば報われるが、成果を上げられなければ去るしかないのだ。

forbes.com 原文

翻訳=藤原聡美/ガリレオ

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事