合羽橋リブランディングの立役者 「釜浅商店」店主が見つけた使命

釜浅商店 代表取締役 熊澤大介


楽しそうという思いとは逆に、実際に現場に立つと多くの難題に直面したと言う。

「僕が子供の頃の東京・合羽橋って、いつでも賑わっていたんです。でも今はネットで何でも揃う時代ですからね。街が年々静かになっていく中、このまま同じことをやっていたら先がないと思って、2011年にリブランディングを行いました」

リブランディングという言葉は今でこそ世間に浸透しているが、当時は耳慣れない言葉。ともすれば100年以上続く店が潰れる可能性もあっただけに、断行するにはそれなりの勇気がいる。

熊澤は「最初は怖かったですね」と、神妙な面持ちで当時を振り返る。

「経済的に余裕もなかったですし、とにかく不安でした。作業は僕とデザイナーさんとふたりで、店舗の内外装からコンセプトにいたるまで、膝を突き合わせて議論を重ねながら進めていったのですが、大変だったのは店を変えるということを、社員に伝えることでした。

彼らの中には、これまで社員としてやってきたことがすべて否定されるのではないかという不安があったので。そうではなく、今までやってきたことをよりわかりやすくお客さまに伝えるために変えるのだと説明しました。リブランディングをしてからは、それまでは見られなかった一般の方や外国人のお客さまが多く訪れるようになり、結果が出たことで納得してくれたような気がします」

リブランディングの中で生まれたのが「良理道具」という言葉。

「デザイナーさんと話している中で生まれた言葉です。ブランドコンセプトを決める際、「うちは料理道具店なので〜」と、僕が“料理道具”という言葉を頻繁に使っていたんです。厨房機器やキッチンツールとかではなく料理道具。ちゃんと手に持って、手入れをしながら長く使うことで、自分に馴染み良い道具に育っていくっていう。そこには理由があって、理由があるからこそ長く使い続けていける。そこからこの“良理道具”が生まれました」

熊澤には、そんな“良い「理(ことわり)」のある道具”を使って、かなえたい夢があるという。

「調理場を、全部うちの料理道具で揃えた飯屋をやりたいです。自分が尊敬する料理人の方を招いて、うちにしかない一流の料理道具を用いて、渾身の料理を作っていただくっていう。これはいつか実現させたいと思っています」

インタビュー終了後、席を立ち改めて熊澤を見ると、黒シャツの上からでもわかるほど大胸筋と三角筋の隆起が際立っていた。週3で通っているというジムトレーニングの成果が如実に表れているが「ただ太っているだけですよ」とご謙遜。

そんな熊澤に、プライベートで新たにチャレンジしたいことを訊いてみた。やはりそれは食にまつわること。

「料理ですね。もともとすごく好きなのですが、最近はやる機会が減ってきてしまったので。子供たちも手が離れたし、自分の時間ができてきているので、また本格的に料理に取り組みたいです。それこそ、プロ向けの料理本に出てくるうようなレシピに挑戦したいですね。まずは中華鍋を使う料理から始めようかな」

中華鍋とオタマを持ち、炒めているかのような仕草を見せながらそう話すと、「あっ」と何かに気付いた様子。右手で左肩をさすりながら。

「先ほどの話じゃないですが、もしかしたらこの筋肉、過去に中華鍋で料理を作ったときに生まれた“中華鍋筋トレ”の賜物かも(笑)」

料理中の音も最高、もちろん味も美味しい。何より筋肉もつく!? という“中華鍋筋トレ”。もしかしたらオーシャンズ世代の間にも流行るかもしれない!?
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写真=山本雄生 文=オオサワ系

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