地の利か知見か、W杯で優勝するのは「サッカー国力」の強い国

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いよいよ4年に1度、世界で最も愛されているスポーツであるサッカーの祭典、ワールドカップが始まる。日本代表は、優勝経験のあるドイツ代表やスペイン代表と同組となったが、果たしてグループリーグを勝ち抜くことができるのか。

そして優勝国として、イタリア人彫刻家シルビオ・ガザニガがデザインした純金製のトロフィーを手にするのはどこなのか。

最も強い国が優勝するとは限らない


まず押さえておかなければならないのは、ワールドカップではピッチのなかで「最も強い国」が優勝するとは言えないことだ。かつて1990年代の最強かつ最良チームであったオランダ代表、あるいは近年のベルギー代表は、ついに優勝に届くことがなかった。

今回のカタール大会でも純粋な選手の能力だけを考えれば、優勝の可能性がある国は7カ国から8カ国程度はある。しかし、詳細に見ていくと、幾つかの国はそこから落ちていく。

約1カ月間というけっして短くない大会期間中のコンディション維持、医療などスタッフのサポート、練習場所や宿泊場所、食事などのロジスティクス、それらピッチ外の「変数」に対応していかなければならない。

近年、それが最も顕著に現れたのが2014年のブラジル大会である。1958年のスウェーデン大会を除けば、欧州大陸で行われた大会では欧州の代表が、中南米大陸で行われた大会では南米の代表が優勝してきた。

ブラジルは国土が広く、寒暖の差が大きい。代表チームが使用可能な宿泊施設と整備された練習場所は限られる。そのため、コンディション維持をしやすい地元のブラジル代表、もしくは隣国アルゼンチン代表の優勝が有力視されていた。

ところが、優勝したのはドイツ代表だった。ドイツはグループリーグをブラジル北東部、通称「ノロデエスチ」(ポルトガル語で「北東部」)と呼ばれるバイア州、ペルナンブッコ州で試合をしている。

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2014年ブラジル大会で優勝したドイツ代表(Getty Images)

ぼくは何度もノロデエスチを訪れたことがある。美しい海、優しい人たち、心をわしづかみにされる素晴らしい場所である。ただ、情報、移動インフラなどはサンパウロなどの商業都市と比較するとかなり落ちる。また南部の大都市に比べより赤道に近いため、かなり高温多湿でけっして過ごしやすい環境ではない。

ドイツ代表は、組み合わせが決まった直後、メルセデスベンツなどのスポンサー企業の協力を仰ぎ、敢えてこのバイア州のサントアンドレに「カンポ・バイア」という1万5000平方メートルの敷地にトレーニングセンター、練習グラウンド、レストランなどを完備した施設を建設した。

そして、本番のピッチと同じ条件となるであろう高温多湿の地を選んで、練習を重ねて、試合に臨んだのだ。ちなみにある国は快適な環境の練習地を選択したため、気候条件の厳しかった本番の試合では惨敗したそうだ。

結局ドイツ代表は、準決勝でネイマールを擁するブラジル代表を7対1で完膚なきまで叩き潰し、決勝でリオネル・メッシのいるアルゼンチン代表を延長で退けた。ドイツの試合に対する取り組み方、つまり「サッカー国力」は世界一だということを見せつけたのだ。
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文=田崎健太

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