ビジネス

2022.11.19

コロナビール、漁師たちの「プラごみ回収トーナメント」でごみを収入に変える 

Corona 「Plastic Fishing Tournament」の一場面

企業やブランドが社会問題に対するメッセージを積極的に発信する傾向は、すでに長年続いている。日本でもSDGs関連のメッセージは多くの企業から頻繁に発信されていて、私などは“SDGs疲れ”や“社会正義倦怠感”のようなものを感じてしまう。

社会に良いことにはもちろん貢献したいけれど、ビールを飲んでもお肉を食べても、服を買ってもレジャーに出かけても、つねにメッセージを突き付けられると、良くも悪くもだんだん反応が鈍くなってしまう。

プラごみの被害者である漁師を支援


そんな傾向を見透かしたようにコロナビールが行ったのが、“プラスティック・フィッシング・トーナメント”だ。

このキャンペーンは、6月にフランスで開催されたカンヌライオンズ2022で、ブランド・エクスピリエンス&アクティベーション部門ゴールドなどを受賞した。カンヌライオンズとは、世界の広告界やマーケティング界で飛びぬけて大きな影響力を持つアワ−ドである。


Corona l Plastic Fishing Tournament l Cannes Lions

“プラスティック・フィッシング・トーナメント”とは、“プラごみを回収した獲得量を競うトーナメント”。海洋プラスティックごみを減らすための取り組みで、誰かの“環境を大切にする心”に訴えるのではなく、実際にプラごみが多過ぎて漁に支障をきたしている漁師達に参加してもらうものだ。

コロナビールは獲得量に応じて漁師達に賞金を出し、いわばプラごみの被害者である彼らを支援しながら、20トン以上ものプラごみを減らした。

この施策は、2021年6月にメキシコで試験的に行われ、100人以上の漁師達により3トンもの海洋プラごみを回収するに至った。その成果を受けて、2022年2月にはブラジル、同年3月に中国とイスラエル、4月にはコロンビアと南アフリカと、世界各地で行われた。

さらに、このキャンペーンを期に、各国のリサイクル業者と漁師たちを直接結びつけることにも成功した。トーナメント終了後も漁師達が海洋プラごみを収入に変える道筋ができ、一過性ではない施策になったのだ。

「ヘビーな課題に、トーナメント形式を用いるのって軽々しくない?」と、言い出しそうなお堅い人もいそうだが、きちんと成果も挙げ、世界最高峰のカンヌライオンズの審査員たちにも高く評価されたわけだ。
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文=佐藤達郎

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