私が年下の上司に仕えることになったのは、2009年の初めのことだった。
「フォーブス」が雑誌とオンラインの部署を一体化したのだ。この業界に30年居る私にとって、初めての経験だった。
もちろん事態を受け入れるのは簡単ではなかった。その若い女性上司が頭が良く、デジタル分野にも詳しいことは承知していたが、補佐役の地位に甘んじなければならないことに私は傷ついた。正直なところ、年上なのになんで自分が下の立場になるのか納得できなかったのだ。
最初の数カ月は悲惨だった。上司は私の不機嫌な態度だけでなく、SEOを意識した文章の書き方や、アクセスが増える見出しのつけ方といったごく基本的なITスキルさえ知らないことにも耐えなくてはならなかった。
コミュニケーションのとり方もまったく違った。メールやインスタント・メッセージで頻繁にやり取りするのが彼女のやり方だったが、上司のところに顔を出して直接話すのが私のこれまでの流儀だった。
年下の上司に仕える年配社員の数は、近年、急速に増えつつあるという。
求人サイトの「キャリア・ビルダー」の調査(2014年)によると、回答者の38%が現在、年下の上司に仕えていると答えている。
ITの導入による変化がこの事態をもたらした。私が働く出版業界でいえば、オンラインのコンテンツとソーシャルメディアの台頭だ。滅びゆく恐竜のような立場になった我々は、年下の上司たちとなんとかとうまくやっていくしかない。
この件について、私は職場の世代間ギャップに詳しいふたりのキャリアコンサルタントと、コロンビア大学で臨床心理学を教えるビル・ピブニック氏にインタビューを試みた。彼らの話を参考にして、年下の上司とうまく付き合うコツをまとめてみた。
1.コミュニケーションのとり方をまず話し合う
上司のやり方に従うこと。連絡を取るのは、インスタント・メッセージがいいのか、メールがいいのか、それとも直接話したいのか、まず訊ねることが大切だ。
2.メールと電話のエチケットを学ぶ
若い世代には即座にレスポンスするのがエチケット。不在着信履歴は、折り返し電話をくださいというメッセージだと解釈すること。
3.顔を突き合わせて会議するのはあきらめる
仕事はデジタルデバイスで進めるべし。会って話そうとするのはなるべく避ける。
4.年上だから尊重されるとは思わないこと
自分に能力があることを見せつけろ。上司の信頼を勝ち取るにはそれしかない。
5.親やメンターであるかのように振舞わない
上司の周りをうろついて世話を焼こうとしないこと。ベテラン社員がやりがちなことだ。
6.自分が変わらなければならないことを受け入れる
年下の上司と年配の部下の関係を従来の「支配と服従」と捉えてはいけないと、心理学者のピブニック氏は語る。「服従するのではなく、“ポジションを譲る”と考えるべきだ」というのが、彼女のアドバイスだ。
7.自分が知らないことはちゃんと教えてもらう
年下の上司からあなたが学ぶべきことはたくさんある。
上司が上昇志向の強いタイプなら、チームの一員としてベストを尽くすべし。
もし、上司が創業者の孫娘か役員の親戚であまり使えないタイプなら、あなたの助言を欲しがるだろう。ベストを尽くして感謝の念を勝ち取れば、今後の昇進にも結びつくかもしれない。