名ライターから着想を得た老舗ダンヒルの意欲作

「ダンヒル」のショルダーバッグ

Forbes JAPAN本誌で連載中の『紳士淑女の嗜み』。ファッションディレクターの森岡弘とベテラン編集者の小暮昌弘が「紳士淑女が持つべきアイテム」を語る。今回は11月号(9月24日発売)より、「ダンヒル」のショルダーバッグをピックアップ。


森岡 弘(以下、森岡):英国好きの小暮さん、今回は紳士のためのブランド、ダンヒルです。

小暮昌弘(以下、小暮):生来、トラッド好き、クラシック好きなもので(笑)。もちろん、ダンヒルにはずっと注目してきました。

森岡:クリエイティブ・ディレクターのマーク・ウェストンはモダンな作風で話題を集めていますが、今回紹介するバッグと革小物はダンヒルのアーカイブをヒントにデザインされた特別なコレクションです。

小暮:確か以前にこの連載で紹介した「ロック バッグ」もそうでしたよね。スクエアな形状のバッグで、真ちゅうの鍵がアーカイブから引用されたディテールだったのでは。

森岡:そうです。今回は1970年代に発表されたライターの名作「ローラガス」からインスピレーションを得ています。

小暮:今回はライターですか。たばこや喫煙具はダンヒルのアイコンのひとつ。ずいぶん前になりますが、私、ロンドンでダンヒルの博物館(現在は閉館)を訪れたことがあります。館長にたくさん並んだライターを一つひとつ説明していただきました。ものすごい数がありましたが、そのなかにこの「ローラガス」もあったかもしれませんね。

森岡:あったでしょう、たぶん。「ローラガス」は、ダンヒルの最も象徴的なライターだそうで、日本でも注目され、記録的に売れたそうです。日本でもご存じの方が多いのではないでしょうか。

小暮:資料写真を用意していただきましたが、「ローラガス」はこれですね。ジョシュ・シムズが書いた『MEN’S FASHION BIBLE』(青幻舎)によれば、エルヴィス・プレスリーも14金製のモデルを愛用していて、彼はタイトなパンツルックが多かったので、ボディガードが代わりにヒップポケットに携帯していたらしいです。

森岡:「ローラガス」ライターの表面に刻まれたチューブ状のパターンをバッグや革小物のレザーに施すことで、ほかの革製品にはない印象に仕上げています。

小暮:これだけはっきりとレザーに凹凸を入れていくのは大変でしょうね。

森岡:なんでもライターの凹凸を逆にした金型をまず製作し、その金型を加熱してレザーに一定の圧力をかけながら型を押し当て、跡を付けていくそうです。

小暮:そうとう手が込んだレザーですね。しかもパターンがはっきりと入っているので、男性的な印象を醸し出しています。さすが紳士のためのブランド、ダンヒルです。
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photograph by Masahiro Okamura|text by Masahiro Kogure|fashion direction by Hiroshi Morioka|edit by Akio Takashiro

この記事は 「Forbes JAPAN No.099 2022年11月号(2022/9/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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