森岡 弘(以下、森岡):英国好きの小暮さん、今回は紳士のためのブランド、ダンヒルです。
小暮昌弘(以下、小暮):生来、トラッド好き、クラシック好きなもので(笑)。もちろん、ダンヒルにはずっと注目してきました。
森岡:クリエイティブ・ディレクターのマーク・ウェストンはモダンな作風で話題を集めていますが、今回紹介するバッグと革小物はダンヒルのアーカイブをヒントにデザインされた特別なコレクションです。
小暮:確か以前にこの連載で紹介した「ロック バッグ」もそうでしたよね。スクエアな形状のバッグで、真ちゅうの鍵がアーカイブから引用されたディテールだったのでは。
森岡:そうです。今回は1970年代に発表されたライターの名作「ローラガス」からインスピレーションを得ています。
小暮:今回はライターですか。たばこや喫煙具はダンヒルのアイコンのひとつ。ずいぶん前になりますが、私、ロンドンでダンヒルの博物館(現在は閉館)を訪れたことがあります。館長にたくさん並んだライターを一つひとつ説明していただきました。ものすごい数がありましたが、そのなかにこの「ローラガス」もあったかもしれませんね。
森岡:あったでしょう、たぶん。「ローラガス」は、ダンヒルの最も象徴的なライターだそうで、日本でも注目され、記録的に売れたそうです。日本でもご存じの方が多いのではないでしょうか。
小暮:資料写真を用意していただきましたが、「ローラガス」はこれですね。ジョシュ・シムズが書いた『MEN’S FASHION BIBLE』(青幻舎)によれば、エルヴィス・プレスリーも14金製のモデルを愛用していて、彼はタイトなパンツルックが多かったので、ボディガードが代わりにヒップポケットに携帯していたらしいです。
森岡:「ローラガス」ライターの表面に刻まれたチューブ状のパターンをバッグや革小物のレザーに施すことで、ほかの革製品にはない印象に仕上げています。
小暮:これだけはっきりとレザーに凹凸を入れていくのは大変でしょうね。
森岡:なんでもライターの凹凸を逆にした金型をまず製作し、その金型を加熱してレザーに一定の圧力をかけながら型を押し当て、跡を付けていくそうです。
小暮:そうとう手が込んだレザーですね。しかもパターンがはっきりと入っているので、男性的な印象を醸し出しています。さすが紳士のためのブランド、ダンヒルです。