10億人以上の若者にイヤフォン常用やクラブの騒音で難聴のリスクあり

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医学誌『BMJ Global Health』に11月15日に発表された新しい研究論文で、研究者は10億人以上のティーンエイジャーや若者がイヤフォンやヘッドフォンの常用、大音量のコンサートや音楽を流す店の利用により難聴になる危険性があると警告している。

世界保健機関(WHO)は、世界中で4億3000万人以上の人がさまざまなレベルの難聴を抱えていると推定している。また、各国政府が難聴予防を優先させなければ、将来的に難聴の人の割合が倍増する可能性があるとも警告している。WHOは、携帯電話など個人が所有するリスニングデバイスやクラブ、バー、ディスコといった騒がしいところに行くなど、大きな音にさらされることが難聴の原因だとしている。

「危険なリスニングを何度も繰り返したり、あるいは一度でも行うと、聴覚系に生理的損傷を与え、一過性または永久的な耳鳴りや聴力の変化が現れることがある」と研究者は述べている。

また「安全でないリスニングによるダメージは生涯にわたって蓄積する可能性がある。人生の早い時期に騒音にさらされた人は、加齢にともなう難聴になりやすいかもしれない」とも指摘している。

この公衆衛生の問題が放置された場合、難聴は大きな経済的損失をもたらすことが研究で明らかにされている。WHOはこれらの経済損失を年間1兆ドル(約139兆円)近くと推定している。

騒音の許容値は大人で80デシベル、子どもでは75デシベルだが、研究によるとパーソナルリスニングデバイスを使用する若者は105デシベルもの音量で聴いている。一方、音楽会場やクラブでの騒音は112デシベルまでのぼることがある。

研究チームは若年層のリスニング習慣をより深く理解するために、1万9000人以上の参加者があった世界の33の研究から収集されたデータベースを掘り下げて調査した。これらの研究は英語、ロシア語、フランス語、スペイン語などさまざまな言語で発表されている。研究の参加者は12〜34歳で、パーソナルリスニングデバイスの使用状況を追跡調査した。

研究の結果、個人用リスニングデバイスで危険なリスニングにさらされる割合は約24%で、デバイスで難聴になる若者の数は世界で6億7000万〜13億5000万人になる可能性があることが明らかになった。

「これらの結果は、難聴予防を促進するために世界中で安全なリスニング習慣に焦点を当てた政策を緊急に実施する必要性を強調している」と研究者は書いている。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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