女性を助けるレイプの「証拠採取キット」が非難される理由

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学術調査によると、性的暴行を受けた女性の大多数が医者による治療を望まないという。このことは、後に加害者を起訴しようと思った場合に、不利に働く可能性がある。この問題を解決するため、Leda HealthのCEOであるマディソン・キャンベルは、女性が自宅にいながら自分の手でレイプ被害の証拠を採取できる検査キットを開発した。

「在宅医療という概念は目新しくないが、レイプ被害者に対するサービスはこれまでなかった」とキャンベルは話す。

彼女は、企業や政府機関が性的暴行の被害者を支援するためにこのキットを購入することを期待しており、将来的には犯人の起訴に活用できると考えている。

しかし、今のところLeda Healthが提供する「証拠採取キット(Early Evidence Kit)」は、米国の刑事裁判所で証拠ツールとして認められていない。それだけでなく、ワシントン州の司法長官は、同社の事業が不公正で欺瞞的だとし、10月31日に同社に対して業務停止命令書を送付した。

Leda Healthの創業メンバーは今年初め、フォーブスが若手起業家を表彰する「30アンダー30」に選出された。同社は、消費者に製品を直接販売をしておらず、現在の顧客はワシントン大学のソロリティ(女子学生の社交クラブ)である「Kappa Delta」のみだ。

同団体は、会員1名当たり17ドル、年間1755ドルをLeda Healthに支払っている。Leda Healthは、性の健康に関する対面講座や、性的暴行の被害者に対する看護師による年中無休の電話サポート、緊急避妊薬や検査キットが入った鍵付きボックスを会員に提供している。

Leda Healthは、「MeToo Kits Company」という社名だった2018年に、イリノイ州やミシガン州、ニューヨーク州などの検事総長からも業務停止命令を受けているが、同社がこれらの州で製品を発売しなかったことで問題は収束した。

Leda Healthは、New York VenturesやAsymmetry Ventures、Nashville Entrepreneur Centerなどから、総額920万ドル(約13億円)を調達している。

キャンベルは、ワシントン州などによる反対は、政治的動機によるものだと主張する。彼女は、「治療を受けない性的暴行の被害者の多くが十分な対応を受けていない」と述べ、自社のサービスはそうした現状に対する代替策だと主張している。自身も性的暴行の被害者であるというキャンベルは、Leda Healthが満たされていない市場ニーズを満たしていると話す。

「彼らは、なぜこれほど強烈に我々を攻撃するのだろうか?」とキャンベルは述べた。彼女によると、ボックスは開けられたことを記録するため、厳格な記録を残すことができるという。「証拠保全には様々なテクノロジーを用いており、裁判所で使うことが可能だ」と彼女は話す。
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編集=上田裕資

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