国際会議は毎年6月と11月に行われており、6期連続というと3年間その地位を守っていることになります。
「HPCG」とは、産業利用などのアプリケーションでよく利用される連立一次方程式を、反復計算を行い正しい解に収束させる方式で計算したときの速度のランキング。富嶽はフルスペックである432筐体(15万8976ノード=OSが動く最小単位)を用いて、16.00PFLOPS(ペタフロップス)という1秒間に1.6京=16000兆回の浮動小数点演算に相当する能力を発揮したことになります。2位はTOP500で1位を獲得している米国の「Frontier」で、14.05PFLOPSと僅かの差となっています。
一方、実社会における複雑な現象は、大規模なグラフ(頂点と枝によりデータの関連性を示したもの)として表現される場合が多いため、こうしたグラフの解析能力が優れていることが重要になっています。ビッグデータをグラフへ変換して分析するという使い方もされており、この能力性能を競うのが「Graph500」です。
今回の富嶽では、HPCGと同様にフルスペックで行い、約2.2兆個の頂点と35.2兆個の枝から構成される超大規模グラフに対する幅優先探索(頂点から近い順に探索する)問題をわずか0.34秒で解いています。スコアで言うと10万2955 GTEPS(ギガテップス)。ギガテップスとは1秒間あたりに処理した枝の数の意です。
TOP500では1位のFrontier(1685.65PFLOPS)に比べ、ピーク時のPFLOPSの値は3倍以上の差(富嶽は537.21PFLOPS)が開いており、いずれも今年6月のスコアと同じです。ただ、HPCGやGraph500はアルゴリズムや通信性能の最適化など、処理面での改善の余地があるため、今後性能アップにつながる可能性はあります。
理研 計算科学研究センター センター長の松岡聡氏は「今回も世界トップクラスの総合的な実力を示せたことは、近年のさまざまな困難な問題を解決するためのスパコンとして、『富岳』の名称が示す通り、幅広い高性能を容易に実現することができることの証となっており、その設計思想が正しかったことを表しています。今後も多くの価値のある科学技術の成果を出し続けるとともに、次世代の高性能計算に向けた研究開発を目指していく所存です」と語っています。