マサチューセッツ工科大が半世紀ぶりにNASAの月面探査に参加へ

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マサチューセッツ工科大学(MIT)は、1961年8月にアポロ計画に関わる最初の契約を獲得し、1969年までに同校のInstrumentation Labが司令船と月着陸船の制御システムなどの構築に関わった。MITの研究チームが開発したアポロ誘導コンピュータは、月へのコースを修正するだけでなく、船内の150ものデバイスと通信したり、宇宙船の物理的要素を制御した。

当時のコンピュータが部屋全体を占めるほど巨大なものであったのに対し、このコンピュータの重さはわずか70ポンド(約32キロ)と、時代を先取りしたものだった。

以来、MITのテクノロジーは半世紀もの間、月面から遠ざかっていたが、今それが変わろうとしている。同校は、宇宙技術企業「Lunar Outpost」が2023年夏に月の南極付近で行うミッションに参加する予定だ。コロラド州本拠のLunar Outpostは、NASAの月面探査計画「アルテミス計画」の一環として、月の石を採取し、NASAに販売する計画だ。

このミッションに用いる機器は、スペースXの「ファルコン9」ロケットに搭載されて打ち上げられる。Lunar Outpostが月面を目指す主な目的は、月の物質を採取することだ。このミッションでNASAがLunar Outpostに支払う金額は、わずか1ドルだというが、同社の共同創業者のJustin Cyrusは、このような画期的なミッションに参加することは非常に重要で「何としてでも契約を獲得したかった」と話した。

MITは、Lunar Outpostの月面探査車「Mobile Autonomous Prospecting Platform(MAPP)」に2つのペイロードを搭載する。1つは親指ほどの大きさの「RESOURCEカメラ」で、月面の様々な地点の3D画像を生成する。もう1つは、マッチ箱サイズの小型ローバー「AstroAnt」で、MAPPの表面を走行してラジエーターの温度を非接触で測定する。

MITの宇宙研究プロジェクト「Space Exploration Initiative」でディレクターを務めるAriel Ekblawによると、ペイロードの開発に約2年をかけたという。例えば、AstraAntはNASAの支援を受けて、「Vomit Comet」と呼ばれる航空機による放物線飛行(急上昇と急降下を繰り返してゼロGを実現する飛行)に4回参加した。
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編集=上田裕資

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