米国南西部の考古学的遺跡では、古代のオウム類の骨が比較的よく見つかっている。その多くがコンゴウインコ(Ara macao)のもので、現在の地理的分布には、メキシコ南部と中央アメリカ全体の熱帯雨林およびサバンナが含まれているが、どちらも発掘地点から1100キロメートル以上離れている。この証拠に基づき、これらのコンゴウインコは、当時盛んだったオウム売買のために移動され、ステータスシンボルあるいは文化的、儀式的目的で保存されてたか、それらの目的で先住民族が現地で繁殖させたのではないかといわれている。
このため、10年前のニューメキシコ州の遺跡で発掘された古代の骨が、別のはるかに稀少な種であるハシブトインコ(Rhynchopsitta pachyrhyncha)であると同定されたことは驚きだった。熱帯性のオウムとは異なり、ハシブトインコは高地の針葉樹原生林に生息している。さらに、これは1つだけの発見ではなかった。ハシブトインコの骨格残骸は、アリゾナ州とニューメキシコ州の別の遺跡でも発掘され、年代は600~1400年頃と測定された。
この古代の跗蹠骨(ふしょこつ、人では足の裏や甲の部分に該当する)は、テキサス大学オースチン校の博士号取得候補者で地球科学者のジョン・モレッティが発見した。モレッティの研究は、北米西部の脊椎動物群集の種組成の変化を、過去300~500万年にわたって分析することに焦点を当てている。
2018年、モレッティはテキサス工科大学博物館で1950年代にニューメキシコ州の遺跡現場で発掘された古代の骨の未分類箱を掘り返していた。
「そこにはシカとウサギの骨がたくさんありましたが、その中でこの特異なインコの骨が見つかったのです」とモレッティが声明で語った。「これを特定した人が誰もいないことを知った私は、そこには調べるべき目標があると強く考えました」
ハシブトインコは絶滅危惧種IAに指定されており、狩猟と生息地の消失の結果、米国では絶滅している。しかし、1930年代にはアリゾナとニューメキシコからメキシコ北部へと活動範囲を広げ、メキシコでは現在も生息している。ハシブトインコは中型のライムグリーンのオウム類で長く尖った尾と黒いくちばしや顔の特徴的な赤い斑点が特徴だ。冬に雪の降る高地の針葉樹原生林に住んでおり、生息地のスペシャリストである。放棄されたキツツキの穴に巣を作り、ほぼ松の実だけを食べて生きている。